2012年3月20日火曜日

果樹の無農薬栽培は難しい

昨日、初めてポンカン園に薬剤散布を行った。動力噴霧器という機械を使って、水に薄めた薬剤をホースで噴射するという作業である。ポンカン作りの指導を受けているSさんという先輩農家に教えてもらいながらの作業だった。

散布したのは、デランフロアブルコサイドDFという薬剤。これらはカンキツがよく冒されるかいよう病黒点病そうか病炭疽病といった病気の原因となる細菌を消毒するものである。1時間半ほどの散布だったが、やはり飛沫が自分にも掛かるので、気分悪くなってしまった。

自分としては、いずれ無農薬栽培をしてみたいと思うが、栽培1年目なのでとりあえず農協の防除歴に従った基本のやり方でやっている。そもそも、果樹の無農薬栽培は、農業技術としては難しい部類に入る。

野菜の無農薬栽培は、簡単ではないにしろある程度の方法論が確立されているため、やってやれないことはない。しかし、果樹のような永年作物の無農薬栽培は、まだ一般的ではないためどうしたらいいのか私もよく分からない。

なぜ果樹の無農薬栽培が難しいかというと、第1に栽培場所が固定されていることが挙げられる。野菜であれば、土壌や周囲に病害虫が固定化しないように転作することが容易であるが、果樹ではそのようなことは不可能である。だから、一度病害虫が圃場に侵入してしまうと、薬剤を使わなければ駆除は難しい。

第2に、病害虫によって枯れてしまうと、損失が大きいということもある。野菜であれば、仮に害虫によってその年の野菜が全滅しても、来年また作ればよい。しかし、果樹の場合、一度全滅すればまた苗から育てなくてはならず、リスクが大きい。

しかも、一般的に、無農薬栽培できるところと、そもそも無理なところがあるため、どこでも無農薬栽培にトライできるというわけでもない。例えば、通常の農薬を使った圃場が隣接していれば、隣接の薬剤散布により益虫なども防除されやすいし、また病害虫も相互に進出してしまう。無農薬栽培しやすいのは、病害虫が近隣から進出されないような孤立したところで、しかも山間でないようなところ(山間だと、山から通常とは別の害虫などが来るため)である。しかし、こんな条件を満たし、かつ栽培に適したところはあまりない。特に産地であればそうである。

だから、不可能といわれたリンゴの無農薬栽培で話題になった『奇跡のリンゴ』が「奇跡」なのも大げさではない。といっても、カンキツの場合は無農薬栽培をやっている人がいないわけではないので、リンゴのようには難しくはないのだと思う。

とはいえ、借りているポンカン園で無農薬栽培にトライするのはやはりリスクが大きい。もし枯らしてしまった場合、どういうことになるのだろうか。栽培を辞める予定だったところといっても、資産価値はゼロではないので、やはり遠慮してしまう。

ところで、永年作物でも無農薬栽培が当たり前、というか農薬を使う必要が全くない作物がある。それは、タケノコである。竹にはほぼ病害虫の被害がないのである。竹というのは、つくづく強い植物だと思う。

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