2012年3月4日日曜日

「タダで貸すよ」では見向きされないものが、「タダであげる」では人気商品に

先日、南さつま市立図書館(加世田本館)で、廃棄本の無料配布イベントがあった。どこの自治体でもやっていると思うが、私はこの種のイベントに初めて参加した。

戦利品は写真の通り。かなり嬉しかったのは、河出書房新社からでている『生活の世界歴史』全10巻と、杉浦康平著『かたち誕生』である。

半分くらいの量がなくなった後の残り物から見つけたので、これが一番の掘り出し物であったのかどうかはよくわからないが、本当に満足した。感謝である。読むのが楽しみだ。

ところで、こういう無料配布イベントの雰囲気は、冊数制限があるかどうか、後で補給されるかどうかによっても違いがあると思うが、今回は、みなさんが必死に本を漁っているので驚いてしまった。

9時半の開始と同時に狭い開場に多くの人がなだれ込み、5分ちょっとで半分ほどの本がなくなってしまったのである! 奪い合う、というわけではないが、我先に多くの本を確保しようと多くの人が躍起になっていた。私は、ちょっとその熱狂に参加できずに、雰囲気が落ちつくまで待ち、それで見つけたのが先ほどの掘り出し物だったのである。

この必死さは、面白いなあと思った。廃棄するくらいの本なのだから、普通に貸し出ししていた時は、ほとんど見向きもされなかった本のはずである(※)。ものによっては、10年以上貸し出しがなかったような本かもしれない。そんな本が、「タダであげますよ」となった途端、争って求められるほどの人気商品になるのである。

タダなのがポイントなのではない。図書館で借りるのは元よりタダなのだから。「タダで貸すよ」といっても見向きもされないのに、「タダであげる」になるとみんなが欲しがるのだ。つまり、「所有できる」ということが重要だとしか考えられない。昨今、シェアがはやっているといわれているが、やはり、人間の所有欲というのは大きいと思う。

必要な時に必要なだけ、合理的に使うにはシェアは適している。しかし、合理的にものを使うだけでは、ちょっと物足りない時が人にはあると思う。別に必要はなくても、そばに置いておきたいとか、なんだかわからないけど欲しいとか、そういう非合理的な所有欲は、やっぱり強力なのではないか。
 
(※)人気がある本でも、傷んだり古くなったりといった理由で買い換えて廃棄(除籍)になる時はある。だから、廃棄本だからといって、必ずしも貸し出しのない不人気の本だというわけではない。しかし、今回、ほとんどの本は古くなって貸し出しされていなかったことが一目瞭然であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿