2012年2月1日水曜日

日本一の巨樹と神社と水~蒲生町めぐり(その1)

先日のエントリに書いたように、鹿児島県林業労働力確保支援センターで研修を受けている。研修後、夕方に付近を散歩すると、なかなか面白い。

ここは、姶良市(あいらし)の蒲生町(かもうちょう)というところで、なんといっても蒲生八幡神社の境内にある「日本一の巨樹 蒲生の大クス」で有名である。

蒲生の大クスは、昭和63年の環境庁(当時)の調査により、幹の太さが24.22メートルということで日本一の巨樹として認定されている。その驚異的に太い幹の中には広さ約8畳、高さ約17メートルの巨大な空洞があり、まさに「となりのトトロ」でトトロの住んでいるクスノキと同様である。

クスノキは巨木になると根が大きく張る樹だが、この大クスではほとんど小山のような根が張っている。しかも、神社の社殿造営等のため2メートルほど根が埋められているということで、実際の根の広がりはもっと大きいらしい。

樹齢は約1500年といわれており、飛鳥時代にはすでに存在していたことになる。蒲生八幡神社が創建された1123年には、すでに樹齢600年以上だった。なお、八幡神社境内にはクスのみならず、イチョウ、カヤ、モミ、スギ、スダジイなど数多くの巨木がある。

まちに、このようなアイコンが存在していることは、少し羨ましい。蒲生町は今町おこしに力を入れているようだが、わかりやすく「大クスの町」として売り出せるからだ。もちろん、蒲生町は大クスだけの町ではないが、観光にせよまちづくりにせよ、中心を「大クス」に据えて取り組むことに誰も異論を唱えないだろうし、以前書いた「観光の目的地」として大クスは申し分ない。

ところで、大クスのある蒲生八幡神社は小高い丘の中腹にあり、あまり知られていないが、神社の裏をさらに登ると蒲生町の上水取水池がある。「池」と書いたけれども厳密には池ではなくて、丘の頂付近から出ている湧き水を人工的に溜めている施設である。

昔は動力付きのポンプがなかったので、上水道の取水は高いところでなくてはならなかった。要は、水圧をかけるために丘の上に取水池を造ったのである。これが大クスの裏山にあるということは偶然ではないだろう。

低いところに水が溜まるのは道理だが、丘の上のような高いところで水が豊かなのはそんなに多くない。このように水の豊かなところであればこそ、大クスは1500年間も枯れずに残ったのだろうし、また、神社が創建され、神域として、クスのみならず数多の巨木が残ることになった。

神社と水は非常に関係が深く、参拝の際に手水で浄めるのも、もともと神社に水が豊かだった証左だろう。いや、もしかしたら、水源を守る(独占する)ということこそ、神社の重要な機能だったのかもしれない。思えば、神社は、ジメジメとしたところに建っていることが多く、おそらく地下水脈の要所に当たっていると思われる。カラッとした神社、というのはなんとなくサマにならないと思わないだろうか。

…というのは勝手な空想であるが、ともかく、大クスを支えたのがこの丘の水だったことは間違いないと思う。大クスを育て、人々に上水を供給しているこの丘は、どんなガイドブックにも載っていないが、侮れない存在である。

【補遺】2/25追記
三国名勝図絵』の蒲生の項を確認してみたところ、大クスについての記載が一切なかった。蒲生八幡神社の図にも、クスらしきものは描かれていない。『三国名勝図絵』編纂当時ももちろん巨樹であったはずなのに、全く言及されていないとはどういうことだろう。不思議である。

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