2013年3月13日水曜日

無名のアーティストの仕事

田舎に越してきてから、行政が配布する地元のお知らせチラシなどをよく見るようになった。というか、田舎のそういうチラシは面白い。

首都圏では、行政が全戸に配布するタイプのチラシは少数だと思うし、他方で民間の地域情報フリーペーパーは充実しているが、そのイベント欄は微細な字で情報が羅列してあるという無味乾燥なもので、眺めていてそれほど楽しいものではない。そもそも、そういう情報はインターネットでいくらでも手に入る。

一方で、田舎では多くのイベントがインターネットではお知らせされていないということもあって(これはこれで問題だが)、チラシというのは情報源として非常に貴重であり、これを眺めるのは楽しい。

そんなチラシの中でも、月例で発行される「南さつまロマンの里づくりネットワーク会議」のチラシはピカイチだ。この冗長な名前の会議が何なのか未詳だが、このチラシは地域の商業的なイベントのお知らせが主な内容である。

このチラシの何がいいかというと、手書きの紙面構成がすこぶる奮っている。今時手書きということだけで価値があるが、これはヘタウマではなく丁寧・実直に作られていて、それだけで読む気になる。さらに肩の力の抜けた絵がいい味をだしているのだが、その内容もいちいち適切で、単に空きスペースに絵を描いたというわけでなく、購読者のイメージを喚起する素材の取捨選択が上手く、また図案が正確である(施設外観とか商品の絵とかが)。

そして情報の編集が非常にうまい。こういうチラシは、実施団体に原稿を出させてそれをそのまま掲載するというケースが多いが、このチラシの場合は(本当にそうしているかは不明だが)主催者に話を聞いて内容を咀嚼した上で、情報を大胆に削り、最適な表現に編集して掲載しているように見える。

そういうわけで、これはなかなかに職人芸的なチラシなのである。作っているのは市役所の職員の方かと思うが、相当にセンスがある人だなと思う。でも逆に言えば、その方が異動などで担当から外れれば、どうなってしまうのだろうという気もしなくもない。いわばこのチラシは、無名のアーティストの仕事なのである。

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