2013年12月21日土曜日

「はきもの奉納」と大木場山神祭りの謎

大浦町の大木場という集落にある大山祇神社で12月に行われる奇祭が「山神(ヤマンカン)祭り」である。先日これの案内をいただいたので見学に行った。

この祭りは、詳しくはこちらのサイト(→鹿児島祭りの森)に譲るが、簡単に言うと片足30kgもあるバカでかい草履を履いて鳥居から拝殿まで歩き、奉納するお祭りである。

その由来は、集落の言い伝えによると
大木場地区は、平家の落人の里といわれ、[…]伝説によると村人は、源氏の追っ手におびえながら暮らしていた。そこで村に通じる峠道に畳十畳ほどの大草履を置いたところ、追っ手は「この村には巨人がいる」と恐れ、退散したという。以来大草履は、村(地区)の守り神として、毎年旧暦11月の「1の申の日」に行われる山神祭りに、これを奉納している。
ということである。

もとより古い言い伝えであり、これが事実かどうか穿鑿することは無意味である。しかしながら、この祭りにはこの説明だけではどうにも奇妙なところが存在していて、いろいろな空想を掻き立てられる。最も謎なのは、「なぜわざわざ大草履を履いて歩かなければならないのか」ということである。

実は、大草履や大草鞋(わらじ)を神社に奉納するということは、決して珍しいことではない。中でも有名なのものに、青森県の岩木山神社へ奉納される大草履がある。これは一足で1トン以上もある。最近になって始まったものだが、東京の浅草寺の仁王門には大草鞋が奉納されているし、福島県の羽黒山神社でも大草鞋が奉納されていて、こちらは草鞋の大きさ日本一を自称している。鹿児島でも、人の背丈よりも大きい弥五郎(※)の大草履が岩川八幡神社に奉納されていた。

なお、こうした巨大な草履・草鞋は山の神に奉納されることもあるが、その場合は1足を揃えず、片足のみが奉納されるのが一般的である。これは、山の神が片目片足と考えられたことを反映しているともいう。

さらに、大きくはない(普通の)草履や草鞋の奉納というのはもっとずっと多い。峠の神を「子(ね)の神」とか「子乃権現(ねのごんげん)」というのがあるが、これには旅の安全を願って草鞋が奉納される習慣があった。また、千葉県の新勝寺の仁王門には大草鞋と共に多くの人々が奉納した草鞋が沢山掲げられているが、これは病気平癒等も含め人生の安泰を願って奉納されたものという。

それから、これは他の地域には類例が少ないが、東京青梅の岩蔵集落というところでは、集落の境界に草鞋を掲げ、疫病や魔物の侵入を防ぐ「伏木(ふせぎ)のわらじ」という共同祭祀の行事がある。

こうした草履・草鞋の奉納、すなわち「はきもの奉納」について整理すると、
(1)巨大なはきものを掲げることにより、(仁王などの)巨人の護持を暗示して、悪鬼を祓う。
(2)峠や道祖神に奉納し、旅の安全を祈願する。また、健脚を願う(韋駄天に奉納される場合もある)。
(3)村の境界などに掲げ、悪鬼や疫病の侵入を防ぐ。
という3つのパターンがありそうである。しかしながら、この3つは時に混淆しているので、明確に分けられない場合も多い。元より、(1)と(3)は機能としては同じであるし、例えば、仁王門には大草鞋も普通の草鞋も両方奉納されるが、これは(1)(2)(3)が同時に願われていると見なせるだろう。

こうした「はきもの奉納」には、未だ纏まった体系的研究がないようだが、どうしてはきものを奉納するのか、ということは意外に大きな謎である。一つの考え方としては、はきもの作りは百姓の重要な副業であり、市で売って貴重な現金収入の元となったので、金銭的価値のあるものを奉納することに意味があったということだ。大木場集落でも、昔から農家の副業として草履作りが盛んで、「コバザイ(木場草履)」として有名だったらしい。

しかし、金銭的価値があるもの、というだけでは、悪鬼や疫病の侵入を防ぐという機能が生まれる理由がわからないし、農具には大体金銭的価値があるわけだから、はきものの奉納だけがこのように日本全国に多い理由として弱い。ともかく、「はきもの奉納」にはまだ解かれていない謎が潜んでいそうである。

話を戻して大木場山神祭りだが、これは類型としてはもちろん(1)に属す。 だが、この機会に他の巨大なはきもの奉納を調べてみて思ったが、この祭りの他には、ただの1つも「大草履・大草鞋を履いて歩く」という祭祀を行って奉納するところはないのである。

そもそも、巨大なはきものを奉納するのは、「こんな巨大なはきものを履く者がここにはいるのだからここから先へ行っては危険である」という意味合いがあり、大木場でもそういう意味だと伝承されているが、であれば巨大なはきものは巨人の神さま(山神)のもので、人間が履いてはならないような気がする。他の祭りでは、大切な神具として奉納がなされており、例えば最初に例示した青森の岩木山神社では、奉納草鞋を作る時は、仮小屋を建ててしめ縄を張り、水垢離(みずごり)を行い小屋に閉じ籠もって作るそうである。

大木場山神祭りでは、はきものは神さまのものというより、「村人を救ったアイテム」のような位置づけで特に神聖なものと見なされていないので、別段不自然ではないという見方もできるが、であれば山神に奉納する理由もわからないのである。そもそも、伝承には山神も巨人も(!)登場しないわけで、このような祭りが起こった理由があやふやだ。

そういう風に見ると、私としては、この祭りは日本各地に残る「巨人説話」の一変形だと考えたい。鹿児島には弥五郎どんという巨人説話があるし、関東にはダイダラボッチという巨人の伝説が残っている。そもそも、巨人の伝説があったからこそ、源氏の追っ手は「ここには巨人がいるのかもしれない」と恐れて退散したわけで、そういう伝説のない土地であったら、こういう脅しは効かないような気がする。

だから、素朴に考えたら、ここで奉納される大草履は伝説上の巨人に向けられたものではなかろうか。それが、あるいは最初からそうだったのかもしれないが山の神と同一視され、山神に奉納されるようになったのかもしれない。

しかしそう考えても、やはり「なぜわざわざ大草履を履いて歩かなければならないのか」ということはよくわからない。この祭りは厳粛なものではなく、大草履を履いた二人の氏子がえっちらおっちら神社を歩くというユーモラスなもので、芸能的要素が強いが、そのあたりがこの謎を解くヒントなのではないかと思う。

ともかく、この大木場山神祭りは「はきもの奉納」の中でもとりわけ変わった内容を持つ奇祭であることは間違いない。今回、祭りにはどこかの大学の先生と学生が見学に来ていたが、その中の誰かがこの祭りの謎を解いてくれることを期待している。

弥五郎どん…鹿児島・宮崎に残る伝説の巨人。

【参考文献】
『ものと人間の文化史 はきもの』1973年、潮田 鉄雄
『妖怪談義』1977年、柳田 國男

2013年12月13日金曜日

ブラックベリーに取り組んでみます

ブラックベリーの苗を定植した。ブラックベリーというのは、あまり品種改良されていない、野生的な木イチゴである。

ブラックベリーというと、フルーツの名前よりも携帯電話の方が有名かも知れない。しゃれたお菓子に少しトッピングされることはあっても、ブラックベリーそのものの味を知っている人は少ないし、どんな風に栽培されているのかを知っている人はさらに少ない。

というか、私自身知らなかった。どうしてこれに興味を持ったのかというと、イギリスにいる叔父叔母からメールが来て、「ジャム作りをする予定があるなら、イギリスではナショナルトラストが家庭に植えられているグーズベリーやラズベリー、レッドカラントなんかをジャムにして売る事業がとても流行っているから、そっちでもこういう植物の栽培をやってみたらどう?」というような提案をしてくれたからだった。

だが、ここに挙げられているグーズベリーなどというものは、なんだか美味そうだが基本的には北国の植物で、残念なことに南薩の気候とは合致しない。そこで調べて見ると、ベリー類でもブラックベリーが南国の産で、栽培適地はほとんどミカン類と一緒であるという。ここ大浦町ではポンカン、タンカンといったカンキツの生産が盛んなので、これならイケるのでは? と期待したのである。

また、これを植えた場所は開墾地なのだが、土壌が最悪な場所である。釜土(粘土質)で石が多く、作土層が浅い。相当に強い作物でないと栽培の労力が無駄になりそうな、そういう場所である。当初は土壌改善を考えていたが、気長に土壌改善に取り組むような余裕もないし、石はいかんともしがたい。そこで、野生の面影を留めているブラックベリーを植えることにしたわけである。これは、土壌の適応性が大きく、ほとんど場所を選ばずに栽培できるという。

そのかわりデメリットもある。最大の問題は、ツル植物なので自立せず、棚とかフェンスとかを作って仕立ててやらないといけないことだ。台風に耐えるフェンスを自作するのは、多少骨が折れそうだ。強度を持たせるのはワイヤーで張れば簡単だが、今度は草払い等の管理作業の邪魔になる。基本的にはコンクリブロックの小さな基礎を入れて、ステンレスの番線で作ってみようと思っているが、強度と作業性を両立させるにはどうしたらいいものだろうか。そもそも、あまり栽培実績のない作物でもあり、これが正解というのもなさそうなので暫く思案してみよう。

2013年12月11日水曜日

南薩のポストカードはクレジット決済でも買えます

うちでは「南薩の田舎暮らし」というネットショップを「カラーミー」というサービスを利用して開設しているが、このたび「STORES(ストアーズ)」というサービスを利用して、同名のサイトを準備した。

というのも、このSTORESというサービス、無料でショップサイトが開設できるうえ、クレジット決済も月額基本料金なしで利用できる!(ただ、当然だが決済毎の手数料はかかる。)

ネットショップをやっていると実感するが、農産物のような低価格な商品を扱っていると決済というのがけっこうな問題である。振込であれ代引きであれ、決済には手数料がかかるが、1000円のものを買うのに200円も300円も決済手数料を取られるのはいかにもバカバカしい。配送料もかかっているわけなので、配送料と決済手数料という、商品そのものの値段ではないところでお客さんに負担を求めるのは心苦しいし、自分が買う側ならちょっとそういう店では買いたくないと思う。

そのうえ、最近「Nansatz Blue」というポストカードの販売を開始したが、これは450円なので、配送料も含めて600円程度の商品に決済手数料を200円も払うのは現実的ではない。このポストカードは、基本的には農産物を買うついでに買ってもらったらいいかなと思っているが、ついでがない人もいるはずだ。

だから、クレジット決済を導入したらいいわけだが、普通、これはこれで月額利用料がかかる。そこで、ネットショップを2店舗も構えるのは少し無駄な感じもするものの、クレジット決済機能を備えているSTORESでもショップをオープンさせたというわけである。

このSTORES、「最短2分でオンラインストアがつくれる」を売りにしているが、これは本当で、実際に2分くらいで、実に簡単に開設することができた。無料コースだと商品を5つまでしか登録できないといった制限はあるが、基本的な機能はすべて備わっている上にスッキリとしたデザインであり、ネットでちょっとしたものを売りたいという人にはうってつけのサービスだと思う。

現在、こちらの方の「南薩の田舎暮らし」では「Nansatz Blue」以外の商品は登録していないが(というのは、配送の設定の問題があるため)、ネットショップをいくつも持つのは当然好ましいことではないので、しばらくの間は並行して運営してみようと思う。もし、こっちの方がよさそうなら統合することも考えてみたい。

2013年12月7日土曜日

農業の研修旅行で感じたこと

大浦町の若手農家を対象とした、宮崎・都城方面への研修旅行に参加させてもらった。特に記録というものでもないが、感想を書いておきたい。

研修先は、(1)農事組合法人はなどう 農産物直売所「杜の穂倉」、(2)農業生産法人 株式会社宮崎アグリアート、(3)農事組合法人 きらり農場高木、と道中のいくつかの物産館である。

それぞれ刺激を受ける点が多々あったが、この3箇所を通じて印象深かったのは、今や完全に農業は大規模化の時代であるということである。

農水省は、ここ10年来、大規模農家、特にグループ経営の農業経営体を優遇する政策を続けており、日本農業の積年の懸案だった「生産性の低い零細農家の淘汰」を推し進めている。というより、農業の担い手の高齢化等によって、既に農地を集積せざるを得ない現状があったわけで、積極的に零細農家を淘汰しようということではなく、そうした課題を解決しようとする意欲があるグループを支援するような政策を打ってきた。

具体的には、農業の大規模化・集団化に関係する各種の補助金を優遇してきたのであるが、その成果がここ数年で顕在化しつつある。特にそれを体現しているのが(3)の「きらり農場高木」で、詳細は省くが、農水省の推し進めている政策のモデルのような経営を行っている。 集落の農地を集積し、小規模零細農を廃業させ、大型機械を導入して合理的な経営を行う。一般の人がイメージする「アメリカ型農業」と言ったらいいだろうか(※)。

こうした経営は、現在は補助金頼みの部分もあるが、零細農の寄せ集めよりも生産性が高いのは確実で、仮に農水省の優遇政策が終わったとしても、確実に生き残っていくだろう。(3)は日本の農業経営体の目指すべき一つの姿であるといえる。

しかし、である。意地悪なことを言うと、それは農水省が随分以前から推し進めてきたことであって、今ことさらに強調すべきことでもない。(3)は時流を捉えた素晴らしい経営を行っていると思うが、逆に言うと、これまでの農政から理論的に予見される存在であるという見方もできる。もちろん、だから悪いということではなくて、存在としては素晴らしい。でも、私は(3)にはあまり興味を持たなかった。

むしろ、こうして実際に大規模化・集団化をうまく成し遂げた経営を目の当たりにし、私が目指したいのは、これとはまた少し違ったところなのかなということを逆に認識させられた次第である。では私が目指したいところはどこにあるかというと、やはり零細農業である。

零細農業というと、生産性が低くそれこそ補助金頼みのイメージがあり、それは事実である。しかし、大規模化こそが唯一の正解であるとも思えない。むしろ、零細なままで、生産性を高める方法があれば、それを見つけてみたいのである。

そもそも、我が大浦町は(海岸沿いの干拓地は別にして)狭小な農地が散在しており、畦畔も急なところが多く、大規模化しても効率化には限界がある。今後、労働人口の減少によって自然に農地集積は進むと予測されるが、今それを急に進めようという気運もなく、準備には時間と労力がかかり、そのとりまとめは心労が多い仕事になるだろう。

それに、地域の事情もよくわかっていない私のようなヨソ者が、地域の農地を集積していくことを目標に営農計画を立てていくのは無謀というか愚かである。ということは、私は今後も狭小な農地を相手に農業をしていかざるを得ない気がするから、零細農業でどうやって利益率を高めるかということを考える必要があるわけだ。

さらに、これを言い出すと話が農業をはみ出るが、そもそも生産性を高めたいのは農業というより人生である。私は名刺の肩書きに「百姓」と書いているが、人生の生産性を高める手段は農業に限らないわけで、面白いことなら何でも取り組んでみたいし、「農業」だけの効率を追求したいわけでもない。職人的に農業一筋で生きていくのはそれはそれでカッコイイ生き方だと思うけれども、軽佻浮薄な自分にはできない。

大規模化自体が悪いということは全くなくて、むしろ日本の農業に最も必要なことであることは間違いない。私は、大規模化による「サラリーマン農家」の存在が日本の農業を変えると思っている。そして、仮に大浦町の若手農家で農地集積や大規模化に取り組むということになれば、自分に出来ることは積極的に協力はしたい。ただ、一方で「合理的なもののつまらなさ」を感じてしまう自分がいることも確かである。合理的に生きようとすれば、そもそも役所を辞めていないであろう。

偉そうなことを言って、数年後には大浦の農事組合法人に雇われる身になっているかもしれないが、ここは日本本土の果て、薩摩半島の"すんくじら"(隅っこ)なわけだから、日本全体の潮流とはまた違った、辺境の地ならではの取組ができたらいいなと思っている。

なお、(2)の株式会社アグリアートについては、大規模化だけでない、有機農業を始めとしていろいろ独自の取組をやっているし、友人がいるところなので、機会をみてもう一度訪問してみたい。今回、(2)は私のワガママで日程に入れていただいたのだが、ワガママを聞いてくれた皆さんと、事務局の市役所・南薩地域振興局に感謝である。

※ 実際の米国の農業は、もちろんそんなのばかりではない。

2013年12月3日火曜日

ヘーゼルナッツの木=ハシバミを植えてみました

今般開墾した土地に、仕事と趣味の間のようなプロジェクトとして、西洋ハシバミを13本植えた。西洋ハシバミという名前だとピンと来ないが、これはヘーゼルナッツを収穫する木である。

ヘーゼルナッツというと、ヘーゼルナッツ・ラテのように香り付けに使ったり、お菓子のトッピングになったりと、近年日本でもなじみが出てきた素材。ただ、ヘーゼルナッツがどんな形をしているのか、知っている人は少ないと思う。ヘーゼルナッツというのは、私もそのものを食べたことはないのだが、風味がよく栄養豊富なドングリなのだ。

この実をつけるハシバミという木は、約9000年くらい前のヨーロッパでは、圧倒的な優勢種として森を覆っていたという。日本が縄文時代の頃、ヨーロッパの森といえばハシバミの森だったのである。その後気候が寒冷化したため、カシワ類に取って代わられ、今では世界的生産地はトルコとなっている。

ゲルマン民族が入ってくる前にヨーロッパで栄えたケルト人たちは、このハシバミを随分身近に、そして重要なものと考えていたことは確実で、ケルトの伝説にはハシバミの話が残っているし、ハシバミの枝に神秘的な意味を付与し、水脈や鉱脈を探すのに使ったのだという(ダウジングのようなもの)。

また、減少したとはいえ近代以前のヨーロッパの森にはハシバミが多く、中世の農民の重要な食料だったようだ。ヨーロッパの古い話を読んでいると、ハシバミの実をどうしたとか、ハシバミの枝がどうだということが時々出てくるが、これがヘーゼルナッツのことであるとわかった時は随分意外に感じたものである。

例えば、シンデレラ(グリム童話版)では、シンデレラは、産みの母の墓前に挿したハシバミの枝がみるみる成長して、小鳥(妖精)が様々な願いを聞いてくれる舞台となる。どうやら、中世ヨーロッパの人々は、ケルト人から受け継いだのだろうが、ハシバミを不思議な力を持つ木と認識していたようだ。

ちなみに、日本にも種類は違うがハシバミ(榛)は自生しており、古くから食用とされたそうである。しかしそれよりも重要なのは、搾油し、今風に言えばヘーゼルナッツ・オイルを採ったことである。なんでも、灯明としての搾油が行われたのはハシバミを嚆矢とするらしく、7世紀くらいまでの朝廷ではハシバミ油が使われたらしい。堺の遠里小野(おりおの)は古代ハシバミ油製造の拠点だったそうである。

ハシバミはヨーロッパでも日本でも、古代社会において重要な役割を果たした植物といえる。だから栽培してみるというわけでもないが、まず日本にはヘーゼルナッツを生産している人がほとんどいないので、希少価値がある。輸入品に比べて品質はどうかというと心許ないが、面白い商材になりそうな予感がする。この西洋ハシバミ、結実するまで長い時間がかかる、というのが大きな欠点らしいが、何年後に収穫できるだろうか…。

2013年11月26日火曜日

大学の同窓会の活動として、小学校で「先生」をしてきました。

ボランティア活動で、小学校で出前授業をしてきた。

私は東京工業大学という「有名な無名大学」の数学科を卒業しているのであるが、この東工大の同窓会を蔵前工業会といって(東工大は、関東大震災の前には国技館の対岸あたり=蔵前にあった)、この蔵前工業会の行う社会貢献事業が「蔵前理科教室ふしぎ不思議」(通称「くらりか」)というケッタイな名前の出前教室である。

要は、大学の同窓会で理科教室の出前授業をやっていて、それに参画しているわけである。ちなみに蔵前工業会鹿児島県支部では、諸事情を踏まえて本部がやっている「くらりか」とは少し毛色の違う出前授業を行っている。まず、小規模特認校を対象として全学年一緒に授業を行うという点、そして、本家は「科学の原理」をテーマにした実験を行っているが、テーマはそれに限らないという点である。

昨年は単なる手伝いだったのだが、今年は何の因果か私自身が授業をすることになり、本日、鹿児島市立一倉小学校(喜入)で「ペンローズ・タイルできれいな模様をつくろう」という授業を行った。

ペンローズ・タイルについては興味があればWikipediaなどで調べてもらえばよいが、とても簡単に言うと、冒頭に掲げた画像のように、どこまでいっても繰り返しがない、でも規則的に並んだ美しい幾何学模様である。

小学生に(も大人にも)なじみがない材料で、しかも小学校1年生にも分かるように説明しなくてはならないということで、「これってきれいでしょ!? 面白いでしょ!?」以上のことを伝えられたか心許ない(というか多分伝えられていないと思う)。

だが、小学生のみんなが熱心に聞いてくれ、やや時間配分で失敗した点もあったが大過なく終われたことに今はホッとしている。年明けには、伊佐市立南永小学校というところでも授業をするので、今日よりも完成度が高い授業ができるようにしていきたい。

ところで、通常、大学の同窓会のボランティア活動などというものは、金も時間も有り余った退職組が活躍するもので、私のようなガキが出る幕はないのが普通である。しかしながら当同窓会はメンバーが少なく、実働部隊となれる人がほとんどいないこともあり、自分の生活すら成り立っていない私が、なぜかボランティア活動をしているというわけだ。そんな暇があるなら生業に励むべきという気もするが、こういう活動が、生業の面でも何か次の展開に結びついたらいいなと思っている(あんまり期待してないが)。

2013年11月15日金曜日

「南さつま市 市議会だより」で市議の働きぶりを垣間見る

前回に引き続き「南さつま市長・市議選挙」の話である。

こちらに越してきてもうすぐ2年であるが、市長選はともかくとして、市議選については個人的に話をしたことがある人もおらず、評判らしきものも聞かないので、誰に投票すべきか悩んでしまう。前回偉そうに争点らしきものを提示した手前、適当に投票する(?)わけにもいかない。

しかし考えてみると、新人はともかく現職については4年間の働きぶりを見てみればある程度のことは分かるはずである。例えば、会議録を全て読めばどういう人なのかよく分かるとは思う。だが、当然ながらそういう時間的余裕も気力もないので、少し手軽ではあるが、「南さつま市 市議会だより」(年4回発行)をよすがにして現職市議の仕事の一端を垣間見ることにした。

まずは、一般質問の質問回数を見てみる。一般質問とは、年に4回行われる定例会において、市政に対して自由に質疑を行うものである。質問回数という非常に大雑把な指標ではあるが、年に4回しかない機会であるので、積極性を表しているとはいえそうだ。次表はこれをまとめて質問回数の多い順に並べたものである。


名前 質問
回数
2010年 2011年 2012年 2013年
2月 4月 8月 11月 2月 5月 8月 11月 2月 5月 8月 11月 2月 5月 8月 11月
諏訪 昌一 16
鳥居 亮幸 16
清水 春男 16
貴島 修 16
古木 健一 15  
室屋 正和 12        
上村 研一 10            
石原 哲郎 8                
山下 美岳 7                  
田元 和美 7                  
下野 認 7                  
今村 建一郎 7                  
相星 輝彦 6                    
上園 邦丸 6                    
南 敏子 5                      
下釡 清和 5                      
有村 義次 4                        
林 耕二 4                        
若松 正伸 3                          
柳元 拓夫 1                              
石井 博美 0                                
大原 俊博 0                                
※今回の市議選に出ていない人も含めて現職議員全てを掲載している。
※年月は、「議会だより」の掲載号に対応。
※大原氏は議長であるので、質問回数が0回なのは自然。

これを見ると、ほぼ毎回質問をする議員もいれば、ほとんど質問していない議員もいることが分かる(わかりやすいように色分けした)。しかし質問数が多ければ議員として有能であるというわけでもない。委員会(総務委員会とか文教厚生委員会とか4つある)の審議に力を入れている人もいるだろうし、そもそも重要なのは質問の内容である。

ではその内容であるが、4年分の質問内容を精査するとなると一仕事である。そこで、「市議会だより」には一般質問の項目にそれぞれタイトルがつけられているので(議員自身がつけているようだ)、このタイトルだけを見てみることにした。タイトルだけだと何が何だかわからない質問もあるが、それでも関心分野を大まかに掴むことはできる。

市議会議員の仕事は、基本的には行政側が提案する議題に対して賛成・反対の意見を表明するということだが、一般質問は自分の関心事について行政を問いただすことができるわけで、議員の関心分野がダイレクトに現れる。質問のタイトルを見ることにより、選挙公報等を見るよりも、議員候補者がどういう点に力を入れたいのか明白になるだろう。

というわけで、かなり冗長だが参考になる情報と思うので、4年分の一般質問のタイトルを全て書き出してみた。順番は先ほどのランキングと対応している。なお議員名(※敬称略)の後ろにあるコメントは、中心的と思われる関心分野を私なりに書き出したものである。

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諏訪 昌一:インフラ(ごみ、上下水道、防災等)、医療
  • 市長所信表明に関して 他
  • 市の一体化、ごみ処理に関して 他
  • 汚水処理問題について 他
  • 合併後の一市としてのまとまりをどう醸成していくか
  • 汚水処理・雨水対策問題について
  • 本町の用水路の対策について 他
  • 災害対策について 他
  • 福島第一原発事故に関連して
  • 市防災計画に関連して 他
  • 税と社会保障の一体改革に関してどう考えるか
  • 中心市街地の汚水処理のあり方について
  • ごみ処理についてのその後の検討状況について 他
  • 国保の医療費の傾向と対応について 他
  • 生活保護の切下げについて 他
  • 防災対策関係 他
  • 保健・医療と健康について 他

鳥居 亮幸:医療、国保税、社会的弱者
  • 高齢者を差別する医療制度は廃止させよう
  • 介護保険の応益負担の軽減は 他
  • 障がい者の「応益負担」廃止に向けた対応は 他
  • くらしに応じた国保税軽減を行う考えは
  • 高齢者が安心して医療をうけられる対策は 他
  • 高齢者が住みなれた地域で暮らせる対策は
  • お金がなく医療受診できない事態なくす対策
  • 介護サービス取り上げ等不安をなくす対策は
  • 「非関税障壁」撤廃は産業暮らしを変える
  • 「一体改革」阻止・国保負担の軽減対策等
  • 後期高齢者医療制度廃止の公約を守らせよう
  • 国保税の大幅引上げに対応した軽減対策は
  • 子ども未来のため「原発ゼロ」への要請を
  • 後期高齢者医療制度の廃止を要請する考えは
  • くらしを破壊する消費税増税阻止の要請を
  • 長生き社会の基盤を崩さない対策

清水 春男:医療、福祉、暮らし
  • 福祉・暮らしを守り安全なまちづくりを
  • 福祉、暮らしを守る安全なまちづくりを 他
  • 市民が安心して暮らせる為の防災対策等
  • 子育てが、安心して出来る南さつま市を
  • 吹上浜砂の祭典の会期について 等
  • 市民が安心・安全に暮らせる南さつま市を 等
  • 地震から市民が安心・安全に暮らせるように 他
  • 地域に活力を・住民が楽しく暮らせる街づくりを
  • 『TPP、ゴミ処理、病院・特老の公立存続』等
  • 住民が安心して暮らせる南さつま市をつくる
  • 住民が安心して暮らしていける南さつま市を
  • 南さつま市の統一は旧町の活性化で決まる 等
  • 地域の変化に対応した住宅・公共交通政策等
  • 合併して8年目、均衡ある発展めざす市制を 等
  • 燃油高騰で農林水産業を支援する対策を
  • 国保税引下げ、はり・きゅう助成見直しを

貴島 修:農業、大浦町整備、観光
  • 市長のマニフェスト・パワーアップ宣言について
  • 新幹線効果の活用・民営化・救急車・生ゴミ対策
  • スポーツ観光・農業の継続的発展・学校再編
  • 鳥獣害対策・保健師の配置・公共下水道等
  • 避難所の強化・農業委員会選挙について
  • ヤンバルトサカヤスデ駆除、地域審議会対応 等
  • 砂の祭典・学校体育施設照明料金・3セク売却 等
  • 国道226号小湊バイパス・津貫みかん100周年等
  • 大浦中校庭整備・校庭松鳴・工事の評価点制度
  • 大浦町オフトーク・砂の祭典・スポーツ振興等
  • 消防・旧はまゆう建設予定地・亀ヶ丘整備・砂の祭典
  • 青年の登用・広域観光・第3セクター等の民営化
  • 公用車・遊休公有地の管理、大浦川、観光協会等
  • 市道三本松・小浜線、大浦町オフトーク等
  • 児童館・ヤスデ・下水道・農産物輸出入等
  • 鳥獣害対策・国道改築・スポーツ観光振興等

古木 健一:過疎対策、教育、行革
  • 国道270号・226号の整備について 他
  • いなほ館の健全化策について
  • 小中一貫校取組の方向について
  • 株式会社いなほ館の経営健全化について
  • 花渡川上流の整備について
  • 行政事務の確認と監査のあり方について
  • 地上デジタル放送の普及状況と対策
  • 「仰げば尊し」の斉唱について
  • 「行財政改革と集中改革プラン」について
  • 「中学校武道必修に関連して」
  • 「加世田地区9小学校の再編について」 他
  • 「投票所を現状の体制で行うことについて」
  • 空き公共施設等の状況と活用計画について
  • 万世特攻平和祈念館について
  • 加世田南部地域の開発をどのように考えるか

室屋 正和:いなほ館、行政チェック
  • いなほ館の運営、ボートに関する特定事業等
  • 行政改革・実施計画(集中改革プラン)、いなほ館の油再流出の対応等について
  • 元職員の不適切な会計処理、庁舎内の喫煙・自治会の再編について
  • 給食センター・子宮頸がんの公費助成・建設事業費の財源等について
  • 行政改革、実施計画(集中プラン)、いなほ館の経営、検討委員会等について
  • 海抜表示板等、第三セクターの決算、部長制の見直しについて
  • 観光振興・いなほ館の公募・予算議決等について
  • 一般会計予算・いなほ館・防災計画・人口減等について
  • 行政監査・リフォーム補助金・ボート基金・いなほ館・メガソーラー等について
  • 崖浸食・立会人の選任・第三セクター・教職員の不祥事・ボート基金等について
  • 条例・要綱、職員適正化計画、レクの森公園整備計画について
  • 防災無線・各実証事業・農地水対策について

上村 研一:時事ネタ、教育
  • 財政健全化・保育園、学校再編について 他
  • 合併後5年の節目にあたって、マニフェスト、市営住宅の水洗化について 他
  • 震災に伴う予算への影響について 他
  • 住みよい・暮らしよい地域づくり、学校再編
  • 学校再編時の制服購入補助・柔道必修化について
  • 漁業振興・イベントと地域活性化・本庁舎整備について
  • 「第三セクター」と「公の施設」、小児入院施設について
  • 投票区再編、消防広域化、閉校記念事業補助金について 他
  • アベノミクスについて 他
  • 農家の日照り対策・大当海岸公園の管理

石原 哲郎:畜産、施設整備
  • 口蹄疫への対応について 他
  • 第一次産業の育成について 他
  • 体育施設の整備について 他
  • 口蹄疫及び鳥インフルエンザについて 他
  • 東日本大震災を受けて本市の対応は
  • JAの合併について 等
  • 防災・農業振興・体育施設整備・駐車場整備
  • 自治会パートナー制度について 他

山下 美岳:砂の祭典、時事ネタ
  • マニフェストの具現化について
  • 口蹄疫対策は万全か 他
  • 吹上浜砂の祭典について 他
  • 吹上浜砂の祭典の成果と総括 他
  • 定住促進について
  • アベノミクスと緊急経済対策について 他
  • 観光振興について 他

田元 和美:木花館、行政チェック
  • 窓口対応・商業活性化・木花館の開店等
  • 防火水槽用地の取得・「木花館」開店 等
  • 市政1年目の評価・行政嘱託員の適正化 等
  • 吹上浜砂の祭典の成果について 等
  • 産業振興・公共下水道・職員の意識改革等産業振興について
  • 職員の人材育成・産業振興・自主防災組織 等
  • 防災対策・奉仕作業・通学路・人材育成 等

下野 認:砂の祭典、金峰町
  • 金峰レクの森構想等について
  • 市道月型篠田線拡幅工事等について
  • 旧金峰レクの森整備事業等の今後について
  • 市有地等の財産管理について 等
  • 砂の祭典会場の工事計画・集落再編について等
  • 砂の祭典会場等の整備について
  • 大坂小・白川小・大田小の今後の活用策について

今村 建一郎:農業、財政
  • 市長の所信表明等について
  • 財務(債務)状況について 他
  • 人口の動向・集落担当制について 他
  • 農業野現状と課題・観光事業・行政内部体制について
  • 当市の農業の現状と今後について
  • 農業関係・震災について 他
  • 財産・財務状況及び不法投棄の現状について

相星 輝彦:砂の祭典、防災
  • 新川集落災害防止策・砂の祭典について
  • ガンバリーナかせだについて
  • 食育の推進・吹上浜砂の祭典 他
  • 自治会に関する制度・職員数の適正化等
  • 市役所本庁、支所等の防災対策他
  • 防災教育、自主防災組織について 他

上園 邦丸:公共事業
  • 赤字の続く三セクをこのまま運営する考えか
  • 公共事業は地場産業、広域農道整備事業 他
  • 震災の影響と命の大切さについて
  • 人口を増やす対策・道路等の維持管理について
  • 住民負担の軽減策・ふるさと神話について
  • 加世田地域の学校再編計画 他

南 敏子
:教育、観光振興
  • 親子20分読書・トイレ改修・油流出田・木花館等
  • いなほ館油流出の水田活用策について、木花館前国道横断歩道設置 他
  • 観光の表示、市道の整備について
  • 通学路の安全確保・中学校武道必修化・空家条例の制定について
  • 環境衛生について

下釡 清和:生活環境改善
  • 市議等選挙・新型インフルエンザ・通学路用防犯灯、市道等の点検補修整備など
  • 高齢者・生活環境対策と風力発電の課題、松くい・ナラ枯れ対策、小湊生活環境整備
  • ハウス被害・クジラ処理・人口減対策・公共下水道(汚水処理)・道路の速度規制 等
  • 死亡欄・共同募金・らっきょう振興・松くい虫対策・浄化槽保守点検業等を増やす考え等
  • 災害と道路・職員の資格と人事等・浄化槽保守点・検業と清掃業者との関連・松くい虫対策等

有村 義次
:住民生活
  • ゴミの分別・処理等、空家対策、環境基本計画、景観計画、自治会活性化・再編
  • 財政健全化・空き家対策など
  • 防災対策(防災対策概要版・地域防災訓練・自主防災会について)
  • 環境問題・平和都市宣言・看板について 等

林 耕二:笠沙トンネル、笠沙町
  • 株式会社杜氏の里笠沙の経営について 他
  • どうなっている!! 笠沙道路・大笠小中学校再編に係る問題点と提言
  • 国道226号笠沙トンネルの進捗状況について、学校再編による教職員空き家住宅について 他
  • 笠沙トンネル平成28年開通予定について 他

若松 正伸:安全対策
  • 地域産業の振興、住民サービス
  • 地域の安全対策、自主防災組織は
  • 交通安全対策、不快害虫「ヤンバルトサカヤスデ」の駆除対策、今後の常備消防体制について

柳元 拓夫:…
  • 最低制限価格について 他

石井 博美:…
(質問なし)
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こうして見てみると、政治的な方向性はともかくとして、誰が何に積極的なのかはわかるし、タイトルの付け方を見ると、人柄までもおぼろに見えてくるような気がする。既にほとんどの人は誰に投票するか決めているとは思うが、ご参考になれば幸いである。

ところで、この「市議会だより」、作りはぶっきらぼうというか一見無味乾燥だが、じっくり見てみるとよくまとまっており、冗長すぎず淡泊すぎずちょうどいい資料である。最新号の編集後記に「今任期最後の議会だより編集が終わる 毎回皆さんから読まれる紙面づくりには程遠いものになってしまった」とあったが、そうでもないと思う。今後の編集にも期待しています。