2012年1月27日金曜日

大島紬、正確無比な染織と完全分業体制

鹿児島、天文館のマルヤガーデンズで開催されていた「さつまの伝統的工芸品フェスタ」で大島紬を見た。大島紬は今までも何度か見たことはあったのだが、改めて驚嘆した次第である。

とにかく、染めと織りが半端なく正確である。大島紬は「(つむぎ)」と名付けられているが、実態は「(かすり)」である。つまり、一度染めのために織締させ、それを解いて染色してからもう一度織る。絣は、このような工程を経ることによる誤差で、模様がかすったようになることからカスリと呼ばれるわけだが、大島紬の模様は正確無比であり、全くかすっていない。

正確無比な染めと織りが出来ることで、大島紬では、本来、絣とは相性が悪いはずの精緻な紋様が発達したように見受けられる。非常に精緻な幾何学紋様が絣で表現されているとは、一見信じられないほどである。しかも、今回展示されていたものは、伝統的な幾何学紋様をベースにしていながら、極めてモダンなデザイン性を感じさせるものばかりで、非常に魅力的だった。

また、イベントとして織りの体験が準備されていたが、その織り子のおばあちゃんとちょっと話すことができた。この道数十年のベテラン、という方だったけれども、「今でも、模様をつくる織り始めの時は、凄く緊張するんです。あらゆる雑音を入れずに、出来れば鍵をかけてでも一人だけになってやるんです」とおっしゃっていた。

やはり、絣であの精緻な模様を出すのは半端なことではなかったのだ、と納得した。また、そのおばあちゃんが教えてくれたところでは、大島紬ではデザイン、染め、織りなど各工程が完全分業になっているそうだ。これによって正確無比な模様が実現できるのかもしれない。

とはいえ、伝統工芸品は大抵分業して制作されている。アダム・スミスが言ったように、複雑な作業は分業によって効率化される。長く残ってきた伝統工芸の多くは、効率化の圧力に晒され続けてきたことで分業体制が自然に確立したのかもしれない。

ところで、分業しているから凄い、ということはないが、地域の特産品として成立するためには、地域内で分業していることが必要なのだと思う。そうすれば、各戸は独立した経営体であっても、その地域は全体として一つの企業のように経営しうる。大げさに言うと、経営の大規模化ができるわけである。

もちろん、一人で全ての工程をこなす芸術家タイプが創る伝統工芸品もあるが、そういうのは、地域の特産品ではなくて、やはり個人の職人の作品、という側面が強い。地域振興の観点から特産品を考えると、地域内での分業体制が重要ではないか、と思ったりした。


九州新幹線開業1周年記念イベント
かごしまの匠展 第一弾
期間  1/25(水)~29(日)[※最終日は17:00まで]
場所  マルヤガーデンズ 4F garden4,cafe garden
主催  本場大島紬織物協同組合・鹿児島県陶業協同組合

期間  1/28(土),29(日)[1席目 11:30~/2席目 13:30~/3席目 15:30~]
場所  マルヤガーデンズ 7階 open garden

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