2013年2月10日日曜日

かぼちゃの原産地は冷涼で日照量の多いところ

例によって先輩農家Kさんの全面協力・指導を得て、春かぼちゃの栽培をしている。なんと、ビニールハウスまで貸してもらった。昨年の秋かぼちゃが惨憺たる有様だったので、今回に期待である。

ところで、かぼちゃというと「栽培に手のかからない野菜」というイメージがあり、事実何もしなくても収穫できるが、高級野菜である加世田のかぼちゃの場合は違う。

かぼちゃは蔓が無制限に出てくる植物なのだが、その蔓を(今回の場合)2本に留めるため定期的に芽を取り除き、かつ各々の蔓に適正な枚数・大きさの葉がついた状態で雌花を咲かせ、さらに不要な雌花は摘み取らなくてはならない。そしてもちろん、毎日の温度管理(ビニールを剥いだりかぶせたり、通気したり)もある。このための管理作業はとてもやっかいで、手間がかからないどころか、つきっきりの作業が必要になる野菜である。

そして、驚いたのだが、ビニールハウス栽培の場合「低温処理」といって一時期寒さに晒す作業まである。ポカポカ暖かいだけだと花芽分化が進まず雌花が咲かないので、敢えて低温な環境にすることにより、生殖生長を促すのだそうだ。

「西洋かぼちゃ」の原産地は南米で、ペルーや北部アルゼンチンの高原地帯だという。このため寒さには意外と強いが、赤道付近の環境であるため太陽光への要求は大きい。かぼちゃというと夏のイメージがあるが、西洋かぼちゃは実は暑さには弱く、日本の盛夏には耐えられない。つまり日照量は多いが冷涼な環境を好む植物である。そしてこのため、「低温処理」が必要で、ポカポカ暖かいだけだとダメなのだ。

話は逸れるが、江戸時代から栽培されている「日本かぼちゃ」の場合はどうかというと、こちらは逆に暑いのが好きである。ちなみに原産地はインドから東南アジアという(厳密には特定されていないらしい)。

このように、かぼちゃの2大系統である西洋かぼちゃと日本かぼちゃでは栽培適地がかなり違う。このため、冷涼な気候を好む西洋かぼちゃは関東以北(特に東北と北海道)で、温潤な気候を好む日本かぼちゃは西日本で作られてきた。しかし北海道でのかぼちゃの大規模栽培が確立したことや、甘味の強い西洋かぼちゃの方が手軽な家庭料理に合うことなどから、現在、一般的な流通では西洋かぼちゃが主流である。

本来冷涼な気候を好む西洋かぼちゃを鹿児島で栽培するのは一見奇異だが、原産地は赤道に近い地域なので、気温の低い冬から初夏までの間に南国で栽培するのは合理的である。また国内生産量の半分以上を占める北海道産が登場する前に旬を迎えるので、流通的にも競争力がある。そんなことから、あまり認識されていないが鹿児島はかぼちゃの生産量が全国2位(シェアは約7%)なのである。

産地が北海道と鹿児島、という組み合わせの野菜は、他にはないのではないかと思う(ジャガイモが似た傾向を示すが、こちらの場合は長崎が2位であることと、北海道が圧倒的過ぎることで「北海道とそれ以外」の形になっている点が違う)。産地というのはいろいろな事情から形成されるが、南米の赤道付近の高原地帯が原産である、ということが北海道と鹿児島を産地たらしめる主因だとすれば興味深い。

【参考文献】
Cucurbitaceae」2008年、 Austin Deyo and Brendan O‘Malley(多分学生のレポートだと思うが、無難にまとまっていた)

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