2012年8月14日火曜日

カリフォルニアに移住した下村ルイさんの話

以前少しだけ紹介した『続・ぼくの鹿児島案内。』に大浦と枕崎に関する記事があるので紹介したい。

本書は、北海道出身の編集者である岡本 仁さんが、鹿児島の友人知人に紹介されたり、ふとしたきっかけで知った「鹿児島のよかもん」を紹介する本の第2弾である。観光案内のガイドブックではなく、生活者としての素朴な感性から、地元にいるとなかなか気づかない素敵な場所を紹介してくれている。

本書の内容は、鹿児島のあれこれに関する岡本氏のエッセイと氏の友人知人による鹿児島のいいもの紹介なのだが、そこに「ルイさん聞いた話。」というカリフォルニアで出会った鹿児島出身の方の話が唐突に挟まっていて、これが写真を除くと3ページしかないのだが興味深い。

この話は余韻が豊かで、要約するとその滋味が失われるが紹介のためにまとめると、
  • 下村ルイ(旧姓:長野)さんは、今カリフォルニアで、一人で農業をして暮らしている。ルイさんが作る日本式の野菜はファーマーズ・マーケットでも評判だ。
  • ルイさんは枕崎の西鹿篭で生まれたが、父親は若い頃渡米しスタンフォード大学で学んでおり、帰朝後には立神の区長もしていた人物。
  • ルイさん自身はアメリカへの興味はなかったが、仕事にしていた洋裁は鹿児島では需要が少なく、アメリカに行けば暮らしが立つと思い1960年に渡米。しかしアメリカ人は既製服を着こなせることがわかり洋裁を断念。
  • やはりアメリカに住んでいた義姉の紹介で、カリフォルニアで農業をしていた大浦出身の男性を紹介され(なかば無理矢理?)結婚。それ以来夫婦で農業をして生活していたが旦那さんが亡くなり、ファーマーズ・マーケットへの出店もやめていたが、しばらくして一人で再開。
  • 鹿児島には母親が亡くなった1987年に帰ったのが最後。
ということだ。

以前書いたように、南薩からは多くのカリフォルニア移民があったので、時代といえばそれまでだが、興味のなかったアメリカに移民し、しかも本来の目的である洋裁での自立ができずに、写真だけで結婚を決めた旦那さんと農業で暮らしていくことになるという、今から考えるとちょっと場当たり的な人生が興味深い。

それ以上に興味深いのは、数奇な運命といえなくもないものの、こうして、一般的には平凡な女性の人生のスケッチが3ページとはいえ本書で紹介されていること自体だ。この女性の親類は、この記事を知っているのだろうか。そして旦那さんの姓は下村で、大浦では上ノ門集落の方と見受けられるが、どなたかルイさんをご存じの方はいるだろうか。

特に立派なことが書かれているわけでもないし、知人なら知っている話なのかもしれないが、誰か、彼女を知っている方に、この記事をぜひ読んでもらいたいと思った次第である。こうして、思いもよらない所で、彼女の人生が紹介されているということを。

4 件のコメント:

  1. こんにちわ。度々お邪魔します。
    本日の記事内容には関係ありませんが、若干のことについて箇条書き的にコメントさせていただきます。
    (1)以前3月のアーカイブで雑木、雑草の文献をお探しでしたが、文献ではありませんが、下記のHPが少しはお役に立たないでしょうか。大迫達郎氏(元大浦中学の理科の先生)が長年、南さつま地方の山野草について、調査まとめられたものです。確か、南さつま市からその功績で表彰されています。私の中学当時の先生で85歳になられますが、今もお元気です。雑木のほうはあまり掲載されてないようです。
    http://www5.synapse.ne.jp/detuki/
    (2)再度ポンカンについて
    ポンカンに限らず、柑橘類は(1)潮風により美味しくなる(2)良土より石ころ混じりの荒れ地のほうが良く育つ(3)30~40年の古木はより旨味が増す、と昔の古老が言っています。ミカンの産地、愛媛、和歌山、鹿児島県の出水地方を見ても、実証されているようです。その点から考えると、大浦町では小浜、赤生木地区のものが、販売を扱う業者さんにもやはり評判良いようです。
    (3)シキミに記述がありましたが、鹿児島県は墓地用の生花消費が日本一ですが、私も市内にお墓を持っていますが、シキミを墓に供花する人は、まず見かけません。私は個人的に今年からお墓用の高野槇の植えつけを始めてみたいと考えています。当地はヒバが消費が多いのですが、この高野槇はほとんど誰も手掛けていず、一部愛好者が庭木ぐらいにしか植えていません。西洋でもコニファーと呼ばれ、私も供花してみましたが、高野山で使われるように、非常にお墓にしっくりと合う、上品な木です。
    (4)前の記事(お盆)中にゴジルについてコメントさせていただきましたが、その後女房などに確認したところ、地域によって鹿の子汁(カイノコ汁)とゴジルがごちゃ混ぜになっているそうです。いわゆる呉汁は大豆をすり潰して使うが、鹿の子汁はそのまま使います。そして大浦近辺の地区(私の郷里も)これをゴジル(五汁)とと呼ぶところもあるようです。
    以上、長々お邪魔しました。

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    1. uncle farmerさん

      お盆の記事とあわせまして、ご教示・コメントありがとうございます。
      (1)雑草のHP→以前拝見したことがありましたが、改めて見てみますと雑草毎のコメントも興味深いですね。ちょっと勉強してみたいと思います。
      (2)ポンカン→潮風で美味しくなるというのは、科学的には証明されておらず関係ないそうですが、ただ、潮風が当たる斜面がポンカンの適地にあたることが多いのは事実だそうです。つまり、因果関係ではなくて相関関係だということ。荒れ地が適地とか古木が甘いというのは存じ上げませんでした。
      (3)高野槇→なるほど。高野槇は手がけられていないんですね。私も注目してみたいと思います。
      (4)五汁→お盆の記事とあわせまして、ご教示ありがとうございます。具体的な作り方は知らなかったので嬉しかったです。ちなみに、私が聞いたのは大豆をすりつぶして入れるほうでしたね。地域ごとの特色などもあると思いますので、調べてみると面白そうですね。

      重ねて、ご教示ありがとうございました。今後ともいろいろとお聞かせ願えれば幸甚です。

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    2. こんばんわ。
      ポンカンの潮風との因果関係ですが、2年ほど前にネットで愛媛のポンカン作りの方が、有機栽培で化学肥料を一切使わず、【ニガリ】を年に数回葉や土に散布して栽培してることを知りました。ニガリは海水から塩を作る過程の残滓物、塩化マグネシュームですね。ニガリを植物に与えると、それ自体が肥料になるのではではなく、窒素やリンの吸収をよくする働きがあるのだそうです。それで私も科学肥料を一切使わずポンカンを作っているので、ネットでさっそく手配してみたのですが、品薄で手に入りませんでした。潮風に塩化マグネシュームが含まれてるかどうかわかりませんが、先達の人の知識は意外と科学的に証明されなくとも真実かも知れないと思ってます。荒れ土での栽培は甘みが増すのではなく、植物の特性上、根をしっかり張って強靭な樹に育つということではないかと自分なりに解釈してます。また折々にお調べいただいたらご教示ください。

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    3. uncle farmerさん

      確かに、先人の知恵は意外なところで科学的だったりしますから侮れませんね。にがりを葉面散布するというのは初めて聞きましたが、マグネシウムは柑橘には重要な元素なので直観的には意味がありそうな感じがします。私も、よく勉強してみたいと思います。わざわざありがとうございました。

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