2015年8月7日金曜日

クモ、カマキリ、ムカデと圃場生態系

私の柑橘園にはクモが多い。今ちょうど夏剪定をしているが、その最中によく顔にクモの巣をひっつけてしまう。

クモの多さは多分、無農薬栽培をしていることと関係がある。普通の柑橘園にはこんなにクモはいない(ような気がする)。私も無農薬栽培を初めて最初に感じた変化は、「なんかクモが多いなー」ということだった。

クモに比べれば目立った変化でないような気もするが、カマキリも他と比べて多いと思う。ただ、大型のカマキリはあまり目にすることがなく、小さいカマキリが中心なのはなんでなんだろうか。

それから、最近はムカデも多くなって、よく幹にムカデが這っているのでとても怖い。しかもこんな巨大なムカデ見たことない! というような立派なのが這っている。この前はあんまり怖いもんだからムカデを殺してしまった。でもクモもカマキリもムカデも、他の昆虫を食べてくれる存在だから農業的には有り難い虫である。

クモやムカデのような虫は他の虫を食べ、その虫はまたより小さな虫を食べているわけで、クモたちが存在していること自体が、圃場内に餌となる虫がたくさんいる証左だ。だいたいの虫は益虫でも害虫でもないし、クモやムカデがことさら害虫ばかりを食べてくれるというワケでもないのだが、こうして圃場内に(たぶん)安定した生態系ができているということは喜ぶべきことだ。

クモ、カマキリ、ムカデは圃場生態系においてほとんど最上位に位置していて、圃場生態系のありさまを決める重要な存在だ。生態系における少数の捕食者は、生態系のバランスを決める決定的な要因となっていることが多く、それは生物学の用語ではキーストーン種という。

キーストーン種がいなくなると生態系は重大な影響を受ける。無農薬栽培を始めてみて思ったのは、こうして圃場に生態系が出来てくると、農薬を使うとそれを壊してしまうことになるからおいそれとまた農薬は使えないな、ということである。生態系の攪乱によってどのような影響が出るのか不安になるからだ。

例えば日本でイノシシやシカが増えすぎて問題になっていることの原因の一つに、日本の山野におけるキーストーン種であったニホンオオカミの絶滅がある。イノシシやシカが人里まで下りてくるようになったのは山野が杉林ばかりになって食べ物が少なくなったからとか、人家が山近くまで作られるようになったからとかではなく、捕食動物が減ったことが要因として大きいと思われる(そもそも戦前の山ははげ山が多かった)。

ちなみにキーストーン種は生態系のバランスを決めるが、生態系の全生物量(バイオマス)を決めているのは、水とか太陽エネルギーのような外界からの影響を除くと、たぶん土壌微生物だと思う。土壌微生物の生物相が安定することによって、生態系のバランスがより強固になるのではなかろうか。

土壌微生物についてはクモとかムカデみたいに直接観察することは難しいので、ちょっと勉強してみたいと思う。

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