2021年1月18日月曜日

「農地利用最適化推進委員」になりました

今年から「農地利用最適化推進委員」になった(任期は3年)。

「農地利用最適化推進委員」(それにしてもけったいな名前…)とは何かというと、ものすごく簡単にいうと「議決権のない農業委員」である。

では「農業委員」とは何かというと、「農業委員会」の構成員である…というような話をしていくと大変にややこしい上に、あまり意味もない(笑)ので、その話はやめにして、ザックリ言うと「今年から農業委員会の仕事の一部をやることになった」ということである。

「農地」というのは、宅地のようには自由に取引できないようになっている。取引だけでなく農地を他の用途に使うこと(「農地転用」という)や、貸し借りについても規制されていて、農業委員会の議決を経るようになっている。

また、農業委員会には貸し借りの仲介、つまり不動産屋的な機能もある。最近では、荒れそうな農地を誰か適当な人に耕作してもらう、というような仲介が期待されている。

じゃあ、私はこれからそういう農地の不動産屋の仕事をするのかというと、実はそうではなくて、主な仕事はハンコをもらうことである。

どういうことかというと、うちの地域では(たぶん多くの地域で)土地は所有して耕作するよりも、借りて耕作するのが一般的なので、大量の農地の貸し借りが生じている。となると土地の一筆毎に「貸し借りの証文」を作ることになる(「利用権設定」という)。そして、その証文を作るところまでは事務局で作ることができるが、実際に地主にハンコをもらうという作業を誰がやるかという話になる。

というのは、農地を借りたい人(農家)は自分が申請してくるのだから簡単として、問題は地主の方である。大浦町のような高齢化・過疎が進んだところの場合、地主というのは大抵が高齢者であって、それどころか既に死んだ人であることも多いからである(←土地の相続登記がされていないということ)。

まあ実際には、権利関係がひどく錯綜していたり(登記上の名義人と現に所有している人が無関係であるとか)、そもそも誰の土地なのか分からなかったりする場合は、公式の「利用権設定」自体を諦めることが普通なので(こういう、農業委員会を通さないで土地を借りるのを「闇小作」という)、それほど大変なケースは少ないが、それでも地主さんの家を探し出して、ハンコをもらうのは結構大変である。

というわけで、私がやるのは、地主さんの家を探して農地の「貸し借りの証文」にハンコを押してもらにいく、という泥臭い仕事なのである。

実は、この仕事をやることになったのは、自発的な理由もある。ハンコをお願いしにいくのは当然やりたい仕事ではないが、農業委員会の仕事は勉強になるんじゃないかと思ったからだ。農地を巡る法律や規制、国の政策も学べるし、やはり農地の動きは地域の実態の一側面を写していると思う。この仕事を通して、そういうのを知ることができるのは楽しみである。

でも、そういう理由がなかったにしても、大浦町のように過疎が進んだところでは、何にせよなり手がいないので、順番にみんながやっていくような仕事なのである。そういう順番が、私にも回ってきたわけだ。

ところで、農業委員・農地利用最適化推進委員は、「特別職の地方公務員」である。例えば消防団員も「特別職の地方公務員」だし、嘱託員もそうだったと思う。要するに「役場の仕事を公的な身分をもって手伝う人」である。

それで、てっきり「雇用契約」みたいなのがあるのかと思っていたら、全くなくてちょっとビックリした。辞令一枚である。そういえば消防団員になった時もそういうのはなかった。これは「特別職の地方公務員」だからなのかと思っていたが、思い返してみると、自分がかつて国家公務員になった時も辞令一枚だったような気がする。雇用契約書の一枚もなかった。

日本の役所には、そもそも被用者と雇用者が対等な形で契約するという概念がなく、上意下達的に辞令一枚で「任用」する。要するに公務員の雇用は「○○市役所で働きなさい」といった命令の形式なのである。これは誰しも思うように時代錯誤だ。ちゃんと雇用の条件を明示して、双方が同意するという形で任用するべきだ。正式な公務員の場合は「地方公務員法」の規定でもしかしたらやりづらいのかもしれないが、「特別職の地方公務員」の場合は「地方公務員法」が適用されないので、やろうと思えば出来ることだと思う。

といわけで、私は「農地利用最適化推進委員」としてこれからハンコをもらう仕事をするが、自分がそういう仕事をするのを了承したという契約書にハンコを押すということはなかったのである。

こんなユルい体制でいいんだろうか(笑)

2 件のコメント:

  1. 目が覚める指摘。
    一応官報で条件は公示してあるって整理なのかもしれませんけど、ホントそうですね。
    まあ、私も何度かそういう辞令作りましたけど。

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    1. さとうまさん、わざわざコメントありがとうございます。さとうまさんの目を覚ませてよかったです(笑) この慣行を変えるにはたぶん大きな事件が必要でしょうけどね…。でもこういう形式面が精神に及ぼしている影響はたぶん大きいので、はやいとこ近代化してもらいたいと思います!

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