2022年12月11日日曜日

南さつま市民会館を建て替えるなら、薩南病院跡地の利用と絡めては?

今、加世田にある「南さつま市民会館」を建て替える動きがあるのだという。

これは市役所周辺にある公共施設のひとつで、大きな講堂といくつかの研修室・展示スペース等で構成され、2階には教育委員会事務局が入っている。

建設された正確な年はわからないが、見た目でもわかるほど経年劣化しているため、建て替えが検討されているものと思われる。

施設の建て替えはまちづくりには大きなチャンスである。市民会館周辺を見回してみると、今けっこう問題がある。これを解決する建て替えになってもらいたいものである。

第一の問題は、駐車場が絶対的に不足していることである。市民会館の駐車場は、昔加世田川だったところを埋め立てて作った駐車場があるが、これがキャパ不足で、イベントの時などは横の車道に縦列駐車が並ぶ。市民会館の向かいには「ふれあいかせだ」があるが、こちらも駐車場は少ししかないので、両方の施設でイベントがある時は全然車が駐められない。

なにしろ南さつま市は公共交通機関が脆弱であるため、これらの施設を利用する場合はほとんど自家用車が必要だ。両施設の収容人数を考えると駐車場は今の倍くらい必要である。なお、大きなイベントの時には近くの加世田小学校横の駐車場も開放されるが、こちらは施設から600mほど離れている上、小学校の前の細い道路を通っていくため登下校時には危なくて使えない。やはり駐車場の増設は必要だ。

第二の問題は、市民会館と「ふれあいかせだ」という似たような施設が並んでいることだ。市民会館の講堂はフラットで、「ふれあいかせだ」にある「いにしへホール」はフラット+立体座席になっているという違いこそあれ、収容人数も似たようなものだし、市民会館がなくても困らないのではないかと思う。となると建て替え自体が無駄である。

この二点を考えると、市民会館は建て替えるのではなく、つぶして駐車場にするのが合理的だ、ということになる。

だがもうちょっと視野を広げてみると、別の考えが浮かぶ。というのは、今の南さつま市には薩南病院跡地の利用をどうするか、という懸案があるからだ。

県立薩南病院は、今は加世田から車で5分ちょっとの万世にある。それが老朽化のために加世田市街地に移転することになった。新薩南病院の稼働は2024年を予定しているそうだ。これで加世田中心部はさらに賑わうことになるだろう。

それはいいとして、万世の薩南病院跡はどうなるのか。南さつま市ではただでさえ加世田中心地への一極集中が進み、周辺がどんどん寂れてきている。県としてもまだ跡地利用については検討していないそうだが、昨今の県政の縮小傾向を考えると、跡地に新たな施設を県が建設することはまず考えられない。南さつま市が主体的に活用を考えていかないかぎり更地にして終わりであろう(隣接する海浜公園への編入が想定される)。

よって、市民会館を建て替えるのではなく、むしろ薩南病院跡地にそれに代わる施設を(できれば県と協力して)新たに建設する方がずっと意味があると思う。

ではどんな施設を建設するのがいいかというと、私は図書館を中心とした複合型コミュニティスペースがよいと思う。

というのは、南さつま市の図書館事情は貧弱なのだ。特に市民会館の隣にある加世田の図書館(南さつま市立図書館中央図書館)は、建物が小さすぎるという致命的な欠点がある。開架スペースと閲覧室が小さく、蔵書数は約7万5000冊しかない。これは、例えばお隣の日置市の中央図書館(伊集院)が約8万3000冊あるのと比べると見劣りする。そんなに大きな差ではないと思うかも知れないが、市全体で比べると、南さつま市は加世田以外には大きな図書館がないため総蔵書数が約13万冊なのに対し、日置市では約21万冊。総蔵書数では倍近い開きがあるのだ。ちなみに人口は日置市の方が1万人くらい多い。

しかし実際には、両市の図書館利用についてはこれ以上の差がある。なんと日置市民は、鹿児島市立図書館の本も借りることができるのである(鹿児島市が隣接自治体に図書館の広域利用を許可しているため)。鹿児島市立図書館の蔵書数は約146万冊。日置市民はこの大量の蔵書にアクセスできるのだ。南さつま市民がいかに図書館に恵まれていないかわかる。

また、最近は地方行政において図書館を中核としたまちづくりが注目されている。あの話題になったツタヤ図書館こと佐賀県武雄市の図書館は賛否両論あったが(個人的には邪道な図書館だと思う)まちづくりとしては成功事例に属する。その武雄市の人口が、日置市とほぼ同じの4万8000人だから、南さつま市にとっても参考になるだろう。

ともかく、図書館を中心として、市民がイベントやマルシェに活用できるスペースを設けた複合施設を作れば、南さつま市に新しい人の流れや活躍・挑戦の場ができるのではないかと思う。

ついでに言えば、鹿児島県としても南薩地区の施設に課題がないわけではない。まずは、加世田にある南薩地域振興局の合同庁舎が老朽化していることである。数年前の耐震化工事の実施により延命されているが、裏手にはプレハブの庁舎が存在している。さらに加世田保健所、南薩教育事務所も老朽化しており、特に加世田保健所は建物の構造上使い勝手がとても悪い(駐車場の立地など)。こうした施設のいくつかは、万世に集約させた方が維持管理コストも減り、鹿児島市から通勤してくる職員にとっては交通の便もよい。複合型施設の一部は県の庁舎にするのが一案である。

…と、いろいろ勝手なことを書いたが、実のところ市民会館の建て替えがどのような形になろうとも、ある一つの条件さえクリアすればいいと思っている。その条件とは「市民の声を聞いて決めること」である。何しろ”市民”会館である。他の行政施設だって市民の声を聞いて作って欲しいが、市民会館をどうするかについては、市民が主役であるべきだ。

市民会館の建て替えは、おそらくはまだ具体的な議論になってはいない。だが建物の老朽化を考えると早晩その必要はやってくる。さらには2024年には薩南病院移転が控えており、そのタイミングで県に有効な提案を持っていきたいものである。

南さつま市役所の腕の見せどころであろう。

【2022.12.12 追記】
上の書き方だと加世田の図書館を廃止するような印象になるが、加世田図書館は特に学習室利用を中心に需要があるので、それは残して分館にし、新たに本館を万世に建設する、という考えである。

1 件のコメント:

  1. 南さつま市民会館は旧加世田市民会館として、昭和47年10月1日にこけら落しをいたし、当時は白亜の殿堂と言われ、さなざな イベント 行事に利用されてきました。当初から言われていたことが、固定席でないため、使いずらいとのこと 音響効果も、よくなかったようです。 新薩南病院もオープンしたことで、本当に跡地の利用が気になります。市民会館、図書館、保健所、南薩合同庁舎、やはり、大きな駐車場 県に相談しながら、多くの市民から意見を聞いたら良いとおもいます。

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