もちろん、人望があって選ばれた…とかではない。うちの娘たちが通う大浦小学校は全校の児童が約50人しかいない。保護者の数は30組くらいだったと思う。
PTA会長は6年生保護者から選ばれるとは決まっていない…のだが慣例的に6年生保護者が多い。うちの娘も、はや小学6年生。というわけで、いわば「順番」で回ってきたというのが実態である。
小さな小学校の場合、PTA役員をやらされる(確率が高い)というので敬遠する人がいると聞くが、小さな小学校のPTAの場合、PTAの役員も結構ラクである。メンバーには気心が知れた人が多いし、メンバーが少ないから連絡の手間もあんまりない(まあ最近はLINEとかでの連絡が多いが)。
ところが、PTA会長になるとやたらと会議があってこれが大変なのに、なってから気づいた。しかもその会議が、「こんな会議いるの??」というのが多い。
先日は、「第1回 南さつま市校外生活指導連絡会」という会議に出た。この会議は何かというと、校外生活指導……いわゆる「補導」の共通化を図るためのものである。
なぜ「補導」の共通化が必要かというと、例えばある地域では「午後7時以降は子どもだけで外出してはいけない」といった決まりがあるとする。7時半にコンビニの駐車場でたむろしている中学生に対して「こら、こんな時間にダメじゃないか」と「補導」した際、その子どもたちが隣の学区から遊びに来ている子どもたちで、「うちの地域だと8時まではOKとなってるんですけど?」と反論される場合がある。…だから共通化が必要、ということらしい。
特に夏は、夏祭りなどで遅い外出が多くなるので、それに先だって今の時期にこういう会議が行われるとのこと。
しかしながら地域の実態を考えると、こういう会議は不要である。なぜなら、大浦のような南薩の過疎地域には、「補導」の主な舞台であるゲームセンター、ボーリング場、カラオケボックスなどない。それどころかコンビニもなければ夏祭りもない(←コロナ禍だからないのではなくて元からない)。いわゆる「不良」がたむろするような場所がない…というか、不良少年少女がいない。というか子ども自体がいない。「補導」なんかいらないのだ。
南さつま市全体で言っても、「補導」が必要に思えるのは加世田中心部のみで、それにしても鹿児島市内の事情とはずいぶん違う。
そもそも、少年少女の「非行」を防がなければならないとして、もはやそれの主戦場はSNSなどバーチャルな世界に移行している。もちろん「補導」が必要な地域は未だにあるだろうが、特に田舎の場合はバーチャルの比重が大きいのだから、 こういう会議は全く不要だと思う。
じゃあ、なんでこんな会議が行われているのか? もちろん前時代からの名残ではあるのかもしれない。でもそれにしても、大浦なんか昭和40年代から過疎化しているところなので、「補導」が必要だった時代があるのか疑わしい。
実はこの会議にはもっと実務的な背景がある。それは、学校の先生にとって「補導」は職務ではない、ということだ。公立学校の教職員に超過勤務を命じることができる4原則というのがある。それは、
・実習
・学校行事
・職員会議
・非常災害などに必要な業務
である。「補導」はこのどれにも当たらない。だから学校長は先生に対して「夏祭りがあるから○月○日、××先生は補導をお願いします」とか命じることができない。もちろん、個々の先生が善意で補導活動を行うことはできるがそれは職務に位置づけられないボランティア活動である。
しかし現実に「補導」が必要な場所がある。夜遅くにゲームセンターで遊んでいる子どもは、家庭や友だち関係になんらかの問題を抱えていることが多く、ある意味では「補導」はそうした子どもに適切な支援を繋げていく機会となっている。
そこで鹿児島県では(というか多くの都道府県で同じだと思うが)、「補導活動」に対する予算を組んで、「補導」を行う先生に謝金を払う仕組みを作った。校長から命じられる通常の職務ではなく、県からの委託事業として「補導」を位置づけたのである。
ところが県が個々の先生と委託契約をするのは面倒だしあまり意味もない。そこで、各地に「校外指導連絡連絡会」みたいなのを作って、そこに補助金として予算を流すことにした。そして個々の先生には「連絡会」の方から謝金が支出されるのである。この会は、そのために存在しているといっても過言ではない団体なのである!
そして、各学校のPTA会長が、「こんな会議いるのかな〜?」と思いながらもその会議に出ている、ということになる。
この会だけではなく、そういうのが昔ながらの会議には多い。いや、最近出来た会議にもそういうのが多い。
現実的な課題解決に繋がるものだったら、大抵の保護者は喜んで参加する。しかし形式ばかりで、中身のない会議をやるからPTA活動が面倒なものに思うのである。
しかも現実の課題解決には繋がらない、というかむしろ現実を見てもいないのに、こういう会議はやたら大仰で立派な大義名分を掲げている。なんだかその態度にしらけてしまう。
そんなわけで、PTA会長になってみて一番思ったのは、「無駄な会議多すぎ、現実見てなさ過ぎ」ということなのだ。
「校外生活指導連絡会」みたいな会議には正直あんまり出たくないが、不登校や学級崩壊やDV被害や困窮家庭問題など、具体的な問題を解決していくための活動なら、PTA会長として微力ながら尽力していく所存です。
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