2016年4月9日土曜日

アボカドオイルを搾った話

以前ちょっとだけ書いたことがあるとおり、私の住んでいる集落は「共生・協働のむらづくり活性化事業」に昨年度まで取り組んでいた。

それで、その活動の一環として、私は農産加工品の試作をすることを命ぜられていた。去年集落でアボカドの苗を40本くらい植えたので、そのアボカドの収穫を見込んで、特にアボカドを利用した加工品を検討してはどうかと言われていた。

それならば、ということで、先日、以前から自分としても興味があったアボカドオイルの搾油に取り組んでみたので、参考までにその次第をここに書いておく。

アボカドオイルというのは、アボカドの果肉を搾って取った油のことである。ゴマ油にしろ菜種油にしろ普通の油というのは種から搾るものだが、その例外がアボカドとオリーブで、これらは果肉を搾って油を採る。果肉を搾ったものは普通「果汁」と呼ばれるわけだから、これらのオイルは果汁から採れる油なのである。

このアボカドオイル、最近健康によいとか美容によいとかでずいぶん注目を集めており、ネットで検索すると記事がたくさん出てくる。自分自身ではアボカドオイルを使ったことがないので効果がどれほどのものなのか分からないが、不飽和脂肪酸の含有量の高さなどがオリーブオイルと近いということで、少なくともオリーブオイル程度の健康オイルではあるらしい。

ちなみに、アボカドオイルのもう一つの特徴は沸点がかなり高いこと(250℃くらい)であり、カラッとした揚げ物に向いているそうである(でも値段が高いので実際には揚げ物には使えない)。

アボカド自体が日本でもかなり市民権を得てきて、この辺境の地(大浦)でもスーパーにアボカドが売っているくらいだから、次はこのアボカドオイルが絶賛注目中なのだ。

とまあ、そんなアボカドオイルを商品化できたら、独特な特産品になるかもしれないということで、アボカドオイルの搾油に取り組んだわけである。

さて、先ほど書いたように、アボカドオイルはその果肉から搾る油なので、最初はオリーブオイル方式で搾油してみようかと思っていた。 つまり、果肉をミキサーにかけて揉み揉みし、出てきた果汁に浮いてきた上澄みの油をとるやり方である(あくまで家庭用のやり方)。

しかし、九電工が熊本の天草でやっている「天草オリーブ園」というところでオリーブオイルの搾油を一度体験したことがあって、 この方法もかなり非効率的であることがわかっていたので、やはり圧力をかけて搾油するほうが簡単なのではないかと思い、今回は果肉を乾燥させてから圧搾する方法でやってみた。

つまり、オリーブオイル方式だと「果肉→果汁・カス→水分・油」と分離して油を採るわけだが、まず果肉を切ってよく乾燥させれば、果肉→(水分乾燥)→カス・油となり、分離する手間が省けるのではないかと目論んだのである。

実際、アボカドの果肉をスライスして乾燥させたら冒頭写真のようになって、もうそのままで油が採れそうな感じになった。写真だとしっとりした感じに見えるが、実際はカラカラに乾燥していて、濡れているように見えるのは浮いてきた油でギトギト・ヌメヌメしているからである。

これを、PITEBA(ピテバ)という機械を使って搾油した。PITEBAは途上国の農家の自立支援のために作られているらしい簡易的な搾油機である。本当はちゃんとした搾油機を使いたかったが、ちゃんとした搾油機は少なくとも10万円以上はするので予算の関係から簡易的なもので我慢することにしたわけだ。

↓PITEBAはこんな感じ。


結果は、正直言ってほとんど搾れなかった。この機械はあくまで種から油を搾る機械で、ちゃんと注意書きにも「オリーブオイルは搾れません」と書いており、果肉を搾ることは想定されていないのである。乾燥させたら大丈夫かなと思ったが、乾燥させてもブヨブヨした果肉はなかなか機械に入っていかず、入っていっても先端のスクリュー部分でうまく圧力が掛からない。

圧力が掛からないから、油がかなり含有された状態でカスが排出されてしまい、無駄が多い。そもそもアボカドに含有されている油分が多いから、それでもそれなりに搾れたが、搾油率は50%以下だったと思う。

採れたアボカドオイル(濾す前)はこんな感じである。香りが独特で、油というより草っぽい香りがする。上質なオリーブオイルも草っぽい香りがするものだが、やはり同じ果汁系オイルであるだけに質感が近いと思った。

また、色もエメラルドグリーン(写真だとちょっとわかりにくいですが)で、オイルっぽくない(葉緑素が溶けているためらしい)。これを濾紙で濾してみると黄色っぽくなって普通のオイルの色に近くなったが、濾す前の方がアボカドっぽくてキレイかもしれない。

しかし、10個のアボカドから採れた油が100gにも満たないくらいだったので、ちょっと搾油の実験としては失敗である。果肉を乾燥させてから搾るにしても、やはりジャッキ式でちゃんと10tくらいの圧力が掛けられるようにしないと搾油率が低すぎて商業的には難しい。

また、オリーブの場合は(抗酸化オイルとか謳ってる割に不思議なのだが)収穫後24時間以内に搾油しないと品質が劣化するとか言っているのに、アボカドの果肉を(今回の場合は2日間も)乾燥させて搾油したら、油が劣化するのではないかというのも気になった。これは今後ちゃんと調べてみないといけない。

ちなみに、実際売っているアボカドオイルはどうやって作っているのかというと、WEBで調べる限りでは果汁を遠心分離して水と油に分けて作っているようである。工業用の遠心分離器はすごく高そうなのでアボカドオイルづくりのために遠心分離器を導入するのはちょっと現実的でないような気もする。やはり、ジャッキとか気軽に手に入るもので搾油できないと難しい。アボカドオイル屋さんになろうというわけではないので、高額な機械の導入は無理である。

ところで、わざわざアボカドからオイルなんか採らないで、アボカドはそのまま食べたらいいじゃん! と思うかもしれない。その通りである。青果で食べられるものは無闇に加工せず、そのまま食べるのが一番だ。国産アボカドは1個250円以上はするとかいうので、わざわざ油を採らないでそのまま売った方が簡単で収益性がよさそうだ。

しかし、アボカドの場合、「受粉樹」というのが必要である。受粉樹というのは、要するに花粉のために育てる樹のことで、これがないと実がとても付きにくくなる。私の場合は受粉樹に「メキシコーラ」という品種を植えている。この品種は寒さに強く生育が旺盛であり、育てやすい品種なのだが、悲しいことにあまり美味しくない。なのでせっかく実がなってもそれを売ることができない。受粉樹もそれなりの本数があるので、これを利用しなくてはもったいないわけだ。

ということで、この「メキシコーラ」という品種からアボカドオイルが採れればとても嬉しいわけである。世界的にもこの品種は油を採るために育てられていることが多いのではないかと推測され、「メキシコーラ」から生まれた「メキシコーラ・グランデ」という品種は油の含有量が特に高いことで有名だそうだ。

とはいうものの、今回、アボカドオイルを初めて搾ってみて、ここでアボカドオイルを商業的に成り立たせるのは難しい感じがした。菜種油のようなシンプルな搾油であっても国産で作るとかなり高額になるのに、アボカドの場合は材料(果実)にも菜種などと比べるとコストが掛かる上、かなり手間がかかる搾油法をも必要とするのでそこが一番のネックじゃないかと思う。そのあたりにあるようなローテクな機材を使って効率よく搾油する方法が出来れば、100mlを2000円で売って採算が合いそうな気がする(予想)。

でもアボカドの栽培をしているところ自体が日本では限られている中、アボカドオイルまで出来れば相当な話題性がある。話のタネとしてであっても、「南薩のアボカドオイル」ができたらこれは面白い。今回は成功とはいえないが、引き続きアボカドオイルづくりに取り組んでみたい(でも実際アボカドが収穫できるようになるのは先の話なので、気長に)。

4 件のコメント:

  1. はじめまして。
    熊野と申します。
    いつも楽しみにブログを拝見させていただいております。

    私も脱サラして、へべすという香酸柑橘を栽培するため宮崎県門川町で新規就農しました。
    現在、青年農業給付金を受けて生活しております。

    露地のアボカド栽培にも挑戦しておりますが、なかなか厳しい状況です。
    16本定植して、6本枯れました(今年の寒気でハス種がアウト)。
    生き残っているのは、フェルテとメキシコーラです。
    苗木が高価だったので、非常に痛いです。

    ちなみにアボカドの産地化を目指している松山市では、苗木を1本60円で配布しているそうで
    大変羨ましい限りです。
    話がそれました。

    南薩さんのブログを読んでいると、色々と共通点が多いと思い(果樹で就農や、農産加工など)
    かってに親近感を感じてコメントしてしまいました。

    これからも、アボカドオイルなど色々な挑戦を楽しみにしています。

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    1. 熊野さま

      コメントありがとうございます。同じ新規就農仲間ですね!
      アボカド栽培、露地ではなかなか難しいですね。こちらでもこのたびの寒気でかなり被害がありました。松山市みたいに苗木が激安だったらいいんですけどね…。本当羨ましいですね〜。

      なかなかうまくいかないことばかりですが、共に頑張っていきましょう!
      また、日頃のご高覧ありがとうございます!

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  2. むっちゃん2016年5月2日 20:05

    我が家のアボカドは5本中3本が枯れてしまいました。残っているのはフェルテとエッテンガーだけです(葉っぱは1枚も残っていませんでしたが、新芽が出てきました)ウインターメキシカンとメキシコーラとハズは私の背丈よりも高くなっていて2回目の冬越しでコモを巻いた上からもう1枚べたがけ用の不織布をまいたのですが残念でした。南薩さんのアボカド畑は今年収穫できそうですか?

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    1. むっちゃんさん、コメントありがとうございます。
      私のアボカドは、今年フェルテが少し(数個)収穫できるかもしれません。昨年の長雨と台風と寒害で相当痛んでいますので、ベーコンとピンカートンは枯れかかっているような状態ですが、フェルテは傷みを乗り越えた感じですね。でも先が長いのは間違いないです…!

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