筍の旬が終わりにさしかかっている。今、竹林には筍が至るところからにょきにょき出てくる。しかし、この時期の筍は、残念ながらそれほど美味しくない。
日本の市場は、初物信仰が根強い。野菜でも果物でも、初物(つまり旬の最初に出荷されたもの)は高い。需要と供給の関係から、ほとんど流通量がない旬の最初には高額になるのは理屈としてはわかるが、時としてそれは非合理的な値付けにも思える。出荷日が2〜3日違うだけで値段が大きく違う場合もあり、これは生産者としてのみならず消費者としてもよくわからない奇習である。
しかも、多くの野菜では、初物はあまり美味しくない。市場では、少しでも早い出荷が高額取引に繋がることから、生産者としては植物や土壌に多少無理をさせてでも、1日でも早い収穫を目指すのは当然である。そのため、初物よりも若干遅い野菜の方が、実は優れていることが多い。なのに、その値段は半額になったりするのだから、市場価格というのは当てにならない。
しかしながら、筍だけは、高くともぜひ初物を食べるべきだ、と思う。筍の初物は、明らかに旬の終わりのそれよりも遙かに優れている。
なぜなら、旬の終わりの筍は、深い根についた筍であって地上に出るのが遅れたものであることが多いからだ。よってその筍は、収穫時には既にかなりのサイズに生長しており、蓄えられた栄養分がその生長に消費されてしまっているために、栄養面でも味の面でも初物に劣るのである。
ちなみに、筍は旬の終わりにたくさん出てくるものなので、供給が過剰になって価格が大きく下落し、品質の低下以上に筍は安くなる。これは、消費者としてはリーズナブルに買えるということなので、初物を食べるべきだとはいっても、敢えてこのような安い筍を買うというのも一案ではある。
この「旬の終わりにたくさん出てくる」という筍の性質は、生産者側としては困った性質である。品質の劣ったものが、同時に大量に出てくるので、出荷するコストの方が利益よりも大きいような状態である。ほぼ毎日筍を掘っている身としては、もう、「美味しくない筍は出てこないで欲しい」という気持ちである。
ただ、美味しくないといっても初物に比べての話なので、依然としてスーパーで売っている水煮よりは遙かに美味しい筍が採れるし、全部が全部劣った筍ではないので、放っておくのはもったいない。このあたりは、欲の深い人間の業であろう。
ところで、筍の初物、というのはいつの時期の筍なのか、という別の問題もある。鹿児島では「早掘り筍」といって、土中に埋まっている筍を掘り出して出荷しており、これが全国一早い筍なのだ。早いものだと、なんと11月くらいに掘られるものがあるのだが、やはり、これはこれで無理をしている初物だと思う。このご時世、本当の旬を見極めるのは結構難しい。
2012年4月16日月曜日
2012年4月4日水曜日
実は、鹿児島は全国一の筍の産地です。
筍の時期が来た。
4月1日に、今年初めての筍を掘った。例年に比べると少し遅いらしい。今年の冬は寒かったので、生育が遅れているようだ。
うちは、ごく僅かな面積ではあるが竹林を所有している。それでも、筍は毎日のように出てきて、3日くらい放置するとすぐに食べられなくなるので、しょっちゅう竹林に行って掘る必要がある。
すると、我が家だけでは消費しきれないくらいの量が採れるので、近所の方におすそわけすることになる。いつもおすそ分けをもらってばかりなので、うちから差し上げられるようなものは、今のところ、この筍くらいだ。でもこれで、少しは普段の恩返しが出来るかもしれない。
というのも、南薩のこのあたりは竹林が少ない地域なので、筍は割と希少性があるのだ。
竹は時に「史上最強の植物」などと言われ、山林を浸食するやっかいな存在と見なされるが、実は地下水が豊富でないと生育しないという決定的弱点がある。そして、このさつま市大浦町は、保水力のあまりない岩山に囲まれているために、どうやら地下水が豊かでないらしく、あまり竹が生育していないのだ。
ちなみに、北薩の方に行くと、山林を放置するとすぐに竹林化するのが問題になるほど竹林生育に適しており、筍の生産も盛んだ。あまり認識されていないが、鹿児島県は竹林面積が日本一で、筍の生産量も日本一なのである(ときどき福岡県が1位になるが)。
竹林というと京都が有名だが、竹は南方由来の植物なので、生育に暖地が適しているのは当然で、 孟宗竹の筍だけでなく、鹿児島県全体では高級筍の生産も盛んである。しかし、鹿児島茶があまりメジャーでないのと同じく、鹿児島の筍も全国的にはあまりメジャーではない。つくづく、売り込みがヘタな県民性があるような気がする。
4月1日に、今年初めての筍を掘った。例年に比べると少し遅いらしい。今年の冬は寒かったので、生育が遅れているようだ。
うちは、ごく僅かな面積ではあるが竹林を所有している。それでも、筍は毎日のように出てきて、3日くらい放置するとすぐに食べられなくなるので、しょっちゅう竹林に行って掘る必要がある。
すると、我が家だけでは消費しきれないくらいの量が採れるので、近所の方におすそわけすることになる。いつもおすそ分けをもらってばかりなので、うちから差し上げられるようなものは、今のところ、この筍くらいだ。でもこれで、少しは普段の恩返しが出来るかもしれない。
というのも、南薩のこのあたりは竹林が少ない地域なので、筍は割と希少性があるのだ。
竹は時に「史上最強の植物」などと言われ、山林を浸食するやっかいな存在と見なされるが、実は地下水が豊富でないと生育しないという決定的弱点がある。そして、このさつま市大浦町は、保水力のあまりない岩山に囲まれているために、どうやら地下水が豊かでないらしく、あまり竹が生育していないのだ。
ちなみに、北薩の方に行くと、山林を放置するとすぐに竹林化するのが問題になるほど竹林生育に適しており、筍の生産も盛んだ。あまり認識されていないが、鹿児島県は竹林面積が日本一で、筍の生産量も日本一なのである(ときどき福岡県が1位になるが)。
竹林というと京都が有名だが、竹は南方由来の植物なので、生育に暖地が適しているのは当然で、 孟宗竹の筍だけでなく、鹿児島県全体では高級筍の生産も盛んである。しかし、鹿児島茶があまりメジャーでないのと同じく、鹿児島の筍も全国的にはあまりメジャーではない。つくづく、売り込みがヘタな県民性があるような気がする。
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