2015年6月30日火曜日

子どもを増やす過激なアイデア:南さつま市まち・ひと・しごと創生総合戦略へ向けて(その1)

今、南さつま市では(というかどこの市町村でも)「まち・ひと・しごと創生総合戦略」というのの策定作業を行っている。

私は地域審議会(年に2回開催されて市政に意見をいう会議)の委員をやっているので、何かよいアイデアや提案があればくださいという連絡がきた。私はいわゆるアイデアマンではなく、面白味のないことしか思いつけないが、せっかくの機会なので真面目に考えたいと思う。

まず、大前提となる人口減少への対応から。

国の施策では「東京への人口の一極集中」への対応が喧しく言われていて、要するに東京から地方へ移住する人を増やしましょうという方向性のようだ。だが地方同士が移住先として競争するとなれば限られたパイの奪い合いでしかなく、おそらく移住者へのサービス合戦(移住したら○百万円もらえるとか)になってしまう。それに日本全体で人口減少しているのだから、仮に人口の一極集中が是正されても国全体でみたら人口減少の問題は解決されない。

だからまずは地域の自生的人口増加を図るべきである。つまり少子化対策に力を入れなくてはならない。それも、かなり思いきった施策によって目に見える成果を出すことが必要だ。

例えば、子どもが3人いたら生活費の心配はしなくてもよい、というくらいの制度はできないものか。今のこども手当は、3歳未満15,000円/月、未就学児10,000円/月なので、1歳、3歳、5歳の3人の子どもがいれば年間30万円の補助になる。これを5倍にして、年間150万円が支給されることにすれば田舎ではそれだけでなんとか暮らしていける収入になる。こんな制度があれば今2人の子どもがいる人は3人目を作りやすくなるし、子育て世帯が移住してくる数も増えると思う。政策効果は覿面のハズだ。

一方、子どもの数に比例して補助がもらえる方式だと、より多く子どもを作るインセンティブは実は弱いので、1世帯あたりの子どもの数を増やすという明確な目標があるなら、例えば3人以上の子どもがいる家庭を優遇するような政策(急に補助金の額が上がるとか)をすることも有効かもしれない。

どこにそんな財源があるんだ? と思うかもしれないが、南さつま市の世帯数が約16,000で、6歳未満の子どもがいる世帯数が約1200なので(参考:南さつま市次世代育成支援行動計画【後期計画】)、子どもが2人以上いる世帯数は多分1000はないと思う。これが3人以上だときっと500以下になる。500世帯に150万円配ると7億5000万円。南さつま市の年間予算はだいたい500億円。決して捻出不可能な額ではない。幼児の人口が一人増えると地方交付税交付金がだいたい50万円くらい増えるので(※1)、その意味でも子どもを増やす政策には予算を組みやすいと思う。

もちろん、子育てしやすい環境の整備も必要だ。

私自身小さい子ども2人を抱えているわけだが、ちょっとびっくりするのは保育園に対する市の対応。保育園は基本的に「保育に欠ける子」つまり親が就労などの事情で子どもの面倒を見られない子どもが利用できる施設なので、第2子が誕生した場合に第1子が保育園から追い出される(あるいは第2子が相当小さいうちから保育園に入学させられる)ことが全国的に見られる。つまり、母親が赤ちゃんの面倒をみているならお兄ちゃん・お姉ちゃんの面倒も見られるでしょ? 保育園に入れなくてもよいでしょ? という論理で、確かに待機児童などの問題が逼迫している都市部の場合、これは多少冷淡だが理解できる。

しかしそもそも定員に達していないような保育園が多い田舎で、このような杓子定規なやり方をやるのはおかしい。

一方で、保育園が法律上「保育に欠ける子」に対して法律で位置づけられている以上、行政としてはそのような指導を取らざるを得ないのも理解できる。そこでオススメしたいのが認定こども園制度の活用である。

認定こども園は、いわゆる幼保連携の議論の中で生まれたもので、要するに「幼稚園と保育園のいいところをあわせた制度」である。ただ導入から数年経っても思うように認定こども園は増えていない。その理由は、(幼稚園を主管する)文科省と(保育園の)厚労省の連携不足などによって会計や事務が面倒であり、また支援が十分でないなど、要するに施設側にとってやりやすいものになっていないことにあるようである(※2)。

しかしこの制度は利用者側にはとても評判がよい。これまでの保育園は「共働きでないと利用できない」ものだったし、幼稚園は「午後2時以降の子どもの面倒を見なくてはならない」ものだった(もちろん延長保育の制度もあるが)。それがこの制度によって親の就労状態にかかわらず夕方まで子どもを預かってくれるのだから有り難いのは当然だ。

よって、南さつま市でも公立の幼保施設が認定こども園を目指すのはもちろん、既存の私立保育園・幼稚園も認定こども園となるよう政策的に支援していくのがよいと思う。例えば5年後には全ての保育園・幼稚園が認定こども園になるような目標を作って、行政が事務支援などを行い制度導入に力を合わせたらどうだろうか。

子ども3人いれば生活ができ、さらに市内には認定こども園が充実となれば、出生数の増加と子育て世帯の転入は確実だと思う。


(つづく)

※1 地方交付税交付金は、「基準財政需要額」というものに基づいて交付されていて、これは人口や面積などさまざまな要因で構成されるが、これの単位費用を単純に足しあわせると幼児の場合50万円くらいになる。ただ専門家ではないので間違っている可能性もあります。

※2 本来は幼稚園・保育園という縦割り行政の象徴みたいな2種類の施設ではなく、それらを一度解体して「こども園」という簡明な制度にするべきだったものが、両省の既存の制度と整合するのが困難だったために、いわば2階建て部分としての「認定こども園」制度を作ったことに失敗の原因があると思う。

【2015.7.2アップデート】タイトルを改めました。 「南さつま市まち・ひと・しごと創生総合戦略へ向けて(その1)」→(その2)→(その3)と続くとわかりにくかったので。

5 件のコメント:

  1. 返信
    1. テンダーさん、私はつまんないことしか思いつかないので、奇策を練ってください!

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    2. 12歳で参政権を得られる自治区を作ろう!

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    3. 私も次は地方自治について書こうと思ってました! 提案しちゃってください。→ http://www.city.minamisatsuma.lg.jp/shimin/oshirase/e018365.html

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