2012年5月2日水曜日

鹿児島はクズの生産量日本一ですが、南薩ではどうなんでしょう?

数十年ほったらかしになっていた自家林を、何かに生かしたいと考えているが、蔓植物の勢いが凄く、随所に絡まっているので木の伐倒が大変だ。

特にクズ(葛)は凄い。この写真のクズは樹齢20年以上(※)だと思うが、絡まるというより、飛翔するといった方がいいくらいで、自由闊達に樹冠へと伸びている。

西日本では、荒蕪地にはすぐにクズがはびこり、雑草としては最もやっかいな部類に属するが、これはかつて救荒植物(飢饉の際に食料となる植物)だった。クズのつるを切ってしばらくすると半透明のデンプン質がじわっと浮いてくるのがわかるが、クズの中(根)には大量の良質なデンプンが蓄えられているのである。クズから採れるデンプン(葛粉)は、各種デンプンの中でも最高級といわれており、葛粉の原料としてクズは今でも重要な植物である。特に鹿児島ではそうだといえよう。

というのも、あまり認識されることはないが、実は鹿児島は日本一のクズの産地なのである。葛粉というと奈良の吉野葛が有名だが、その原料はほとんどが鹿児島産のクズだ。吉野葛というのは、クズを吉野の水で晒して作られた葛粉のことをいうらしい。

なお、くず餅とか葛切りとか葛粉を使った食べ物は多いが、100%クズを原料とした純粋な葛粉が使われているものはほとんどない(サツマイモ由来のデンプンやコーンスターチを混ぜるのが普通)。かつて飢饉の際に食べられたというクズ(葛粉)は、今や立派な高級食材である。

クズは葛根湯など漢方に使われるだけあって健康食品で、消化がいいだけでなく、食感が繊細・滑らかで透明感があり、純粋な葛粉で作ったくず餅を食べたら二度と忘れられなくなるほど美味らしい。もちろん、そのような葛粉を作るためには非常な手間がかかる。

まず、そういった高級品となるクズは限られていて、30年以上のもので、よく光合成し、根に大量のデンプンを溜めていなくてはならない。30年もののクズの根ともなると、人間の太腿くらいの太さはあるわけで、それを掘り出すだけでも大変な労力だ。また、クズのアクを抜いてデンプン質だけを取り出す作業(水で晒し、沈殿させることを繰り返す)も単純なだけに効率化できないし、その上最上級の葛粉を作るためには2ヶ月〜1年も乾燥させなければならないらしい。葛粉が高級食材になるのも頷ける。

ところで、鹿児島は日本一のクズの産地ではあるが、実は生産は大隅地方に偏っていて、この南薩ではクズ掘りについての話は聞かない。大隅ではクズの掘り子の高齢化などの問題にも直面していると聞くが、「葛スイーツ」の開発など新しい展開も見られる。また近年の健康志向の高まりで、クズに対する再評価の気運もある。葛粉は高級食材であるだけに大きな需要増は見込めないが、今後も安定した取引が予測される。

となれば、この自家林にある葛もなんとか生かせないか、と考えるのが人情だろう。木の伐倒をする上では邪魔者だが、それ自体は高級食材(の原料)なのでただ切り払ってしまうのはもったいない。問題は、鹿児島では大隅地方が生産拠点のため、出荷するためにはフェリーに乗って大隅側まで出向かなければならないということである。それを考えるとおそらく利益が出ない気がして少し萎えるが、なんとか生かす道筋を考えてみたい。何しろ、私もくず餅など葛粉で作ったお菓子が大好きなのである。


※ クズはマメ科の多年草で、木ではないので「樹齢」という言い方は厳密に言えば間違いである。見た目は木のようで、実際やや木質化しているが、切ってみると木とは違うことが分かる。それにしても、50年も生きる草というのはそれだけで凄い。

【蛇足】
個人的には、クズは山伏が全国に広めたものという伝説も気になるところである。最初から全国に自生していたようにも思うが…。また、どうして鹿児島での生産が盛んになったのかいずれ調べてみたい。

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