一行は福岡からいらっしゃったが、巡るのは南薩の地元だから私たちにとっては旅行という感じではないけれども、大変貴重な経験をさせていただいたと思う。ベテラン農家の方々ともう少し意見交換できればという不完全燃焼感はあったし、やはり圃場を実際に見てみないとよくわからないことが多かったように思うが、それでも他地域の専業農家の雰囲気を掴むのにはよかった。
ところで、この研修旅行では笠沙の野間池にある網元が経営する舟宿「のま池」に泊まったが、ここでは定置網観光ができる。要は定置網漁に同行できてその様子を見ることができるのだが、今回それを体験させていただいた(追加料金を払えば定置網にかかった魚も購入できる)。
舟には、かごしま水族館の方も乗船していた。定期的に漁船に乗せてもらい、どのような魚がどれくらい獲れているかを記録して、また水族館として欲しい魚が獲れれば譲ってもらうということなのだそうだ。
ちなみに、葛西臨海公園を始めとして、全国の多くの水族館が笠沙漁協から展示飼育用の魚を調達している。時には外国の水族館にも提供するらしい。その理由としては、第1に黒潮に乗って遠方の海からもたくさんの魚が集まり、年間500種もの魚が水揚げされるという笠沙の海の多様性が挙げられる。そして第2に、笠沙漁協は水族館の活動に対して理解があり、水族館へ魚を提供したり調査員を受け入れたりする体制が整っているということもあるのだそうだ。確かに、漁協の協力が得られなくては傷のない元気な魚を調達するのは困難だ。
出航は朝5時45分。海は凪ぎ。天候は快晴。漁船で野間半島を巡って定置網のポイントへ行き、漁師が網をたぐり寄せて網中の魚を追い込み、最後はタモで掬う。約1mくらいのバショウカジキが1匹、サワラが幾ばくか、大量のトビウオ、そしてアオウミガメが2匹 etc.。それが今回の成果(釣果?)だった。ちなみに、ウミガメは調査用のタグをつけて海に戻す。
この「のま池」の定置網はなんと明治のころから設置されており、百年以上の歴史があるのだそうだ。もちろん網自体は定期的に交換しているわけだし、そのやり方も機械化に伴ってどんどん変わってきたのだろうが、作業を見ると極めて合理化されていて、船員の動きには全く無駄がなく、軽々と作業しているように見えた。長い歴史に裏打ちされた作業という感じがする。流れ作業的になってしまって工夫の余地がなくなってしまうと面白くないのかもしれないけれど、仕事は、こういう風にこなしたいものだと思った。
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