畑の隣に植えられているツゲの木 |
どうしてツゲの木が植えられているのか。それは、ツゲの木は換金性が高いからである。ツゲの材は稠密で堅く、弾力があって美しいことから、将棋の駒や印材、櫛の材料となってきた。特に櫛は、「薩摩つげ櫛」という江戸時代からの伝統的工芸品があり、ツゲ櫛の中でも最高級品なのである。これは、南薩の気候がツゲをより稠密に堅牢に育てるのに適していることによる。そのため、鹿児島のツゲの木は「薩摩つげ」のブランドで高値で取引され、14cm径で約4万円、15cm径で約5万円くらいの相場があるらしい。
換金性が高く相場が安定していて、また生育に15〜20年しかかからないことから、かつてツゲは一種の貯蓄として機能していたという。女の子が生まれると、庭にツゲの木を植えて、成人の頃に切って結婚資金の足しにしたという話がある。ツゲの木は病害虫がつきやすく、山の木のようにほったらかしで育つというわけではないが、庭木なら継続管理が容易だし、保険や貯蓄の金融システムがなかった時代には貴重な貯蓄法だったと思う。
もちろん今の時代にはそういう植えられ方はしないし、櫛や印材の利用も減ってきているけれど、薩摩つげは工芸材として優れているため、パイプオルガンや古楽器などの修復のための部品、またリュートの一部など楽器の材料としての利用も出てきているらしく、新しい活用法がこれから出てくるかもしれない。
ここ大浦町では農家の副業的な植えられ方が多いが、同じ南薩でも、指宿や頴娃ではツゲの産地として今も大規模に生産されている。私も、気の長い話ではあるが、できればツゲの木を山に100本ほど植えてみたいと思っている。
というのも、庭に植えられていたツゲを、窓辺の日当たりをよくするため切ってしまったからだ(換金はしていない)。樹齢は数十年を越えていたので、もしかすると貯蓄として植えていたものかもしれないと、後で思い至った。罪滅ぼしというわけではないが、庭にツゲの木があったという記録を遺したいのかもしれない。築百年近くの古民家だから、庭木を一本切るのも、よく考えなければならない。
【参考】森業・山業 優良ビジネス先進事例ナビ「薩摩つげをめぐるある事件 木材じゃなかった薩摩つげ!?」
柘植の木について大変興味深く拝読させて頂きました。小生も東京でサラリーマン生活を過ごし定年後Uターンした者です。南さつま市の長屋山の山中深い村落の中で生活しています。少しばかりの畑仕事や山仕事を楽しんでいます。父が植えた約30年位経った柘植が50本位あり業者が数回買い取りに来ましたが 格好を付けて断りました(笑)。この記事が大変参考になりました。
返信削除次回は売り払おうと思っています。
コメントありがとうございます。長屋山の方ですか! その柘植は売ってあげた方がお父さんのためにもなりますね。しかし長屋山の方にも柘植の業者が回っているんだなと、そこに驚きました。もし売った場合、今度はまた何か植えられたら、なおいいかもしれません。気をつけて山仕事をされてください。
削除初めまして、コメント失礼します。ツゲの木の買取業者を検索中にブログを読みコメントさせていただきました。
削除もし買取業者をご存じであれば教えていただきたくコメントした次第です。どうぞよろしくお願いいたします!
コメントありがとうございます。柘植の買取業者といえば、このあたりですと頴娃から来られることが多い(というかほとんど)ですが、残念ながら業者の名前などがわかりません。若林印材さんに聞いてみたらわかるかもしれません。(若林印材さん自身が買い取っている可能性もあります)https://r.goope.jp/sr-46-4632311123/
削除早々の御返答ありがとうございます。
返信削除若林印材さんにお伺いしてみます。
情報ありがとうございました!