改築から約40年が経過し、施設がかなり老朽化したことから、この建て替えが検討されているそうだ。
しかし老朽化以外にも課題はある。長期的には、人口減少社会の中で経営が成り立って行くかどうか、短期的には診療科を充実すべきではないかということ(特に休診している小児科の再開、産婦人科の新設)、そして立地面では交通の便が悪いということである。
こうした課題への対処方針を検討するため、県では「県立薩南病院あり方検討委員会」を平成26年に設置して有識者に議論してもらい、その提言は平成28年3月にまとめられている。
【参考】県立薩南病院あり方検討委員会
http://hospital.pref.kagoshima.jp/arikata.html
この報告書はなかなか真面目に作られていて病院の置かれた状況がよくわかるよい資料である。ちなみに報告書では建て直しについても簡単に触れられていて、
なお,今後,県立薩南病院の建物を整備するとした場合,立地の条件としては,診療圏の拡大や患者数の増加による経営の安定化,周辺医療機関の診療科との役割分担,公共交通機関の利便性といった視点で検討する必要がある。と書いてある。これはその通りだと思うが、私ならもう一つ付け加えたいと思う。それは、薩南病院の立地がまちづくりに及ぼす影響である。
南さつま市としては、薩南病院の建て替えにあたっても引き続き南さつま市に設置してもらえることが当然の希望である。というより、別の自治体に移動してしまうなら、いっそ建て替えて欲しくないというのが本音だろう。
中には、今の松林が雰囲気がいいのでここに建て替えて欲しい、という方もいるそうである。しかし、県立病院がこのような辺鄙なところに立地しているのは、もともと薩南病院が結核の隔離病棟、いわゆるサナトリウムだったためで(今でも結核の病床がある)、隔離が必要だった昔ならいざ知らず、今の時代に敢えて交通の便が悪いところにある意味もないので、やはりもうちょっと街中に移設するべきだろう。
そもそも、薩南病院にはもともと小児科があったのになぜ休診せざるをえなかったのかというと、小児科医が確保できなかったというのが一番の問題らしい。というのも、医師不足の中でわざわざこんな僻地の施設の老朽化した病院に行かなくても、もっとよい条件の病院がたくさんあるからだ。
よって、建て替えにあたっては、医師に選ばれるような病院にしなくてはならない。そのためには、ある程度アクセスのよいところにするか、今の位置を堅持するにしても医師にとって魅力のある施設にしなくてはならないだろう。
そして同時に、住民にとっても病院の立地は重要である。病気をした時だけでなく、こういう大きな施設は街の在り方に大きな影響を与える。人の流れもそうだし、施設で働く人の存在も大きい。医師や看護師の子どもがいることで、小学校の児童数も影響してくる。県立病院の立地は、ただ県立病院の経営問題なだけでなく、我々のまちづくりに直結する問題なのである。
の、割にはである。薩南病院の立地をどうするか、というようなことはまだ住民には投げかけられていないようだ。県では薩南病院の建て替えについては2019年度中に基本構想をまとめるとしているから、これからそういう話があるのかもしれないが、報道によればパブリックコメントをするくらいで、ほとんどは密室で決めようとしている感じだ。確かに住民の議論ではまとまるような話ではないかもしれない。
【参考】【鹿児島】県、新薩南病院移転/来年度、基本計画まで策定|鹿児島建設新聞
http://www.senmonshi.com/archive/02/02E77JKBIKYOC0.asp
でも私は、こういうことこそ政治力の力比べではなくて、住民の意思を尊重して決めてもらいたいと思う。自分たちの街をこういう風にしたいという住民の希望に基づいてもらいたいのである。もちろん住民の希望だけでは決められない事項ではあるが、少なくとも希望を斟酌するくらいはやってしかるべきだ。
よく「まちづくりは住民が主役!」と言われる。こういう時こそ、この言葉を思い出すようにしたい。
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