2026年10月9日金曜日

長屋山に計画されている風力発電の環境アセス「配慮書」が意見照会中です(〆切10月23日)

長屋山(狩集原からの眺め)

新たな風力発電計画が明らかになった。

大浦と加世田の境になっている長屋山(ちょうやざん)に、最大180mの風車を最大17基建設するという計画である。

現在、環境アセスメントの「配慮書」が公開(縦覧)され、意見照会が行われている(10月23日まで)。

【参考】(仮称)南さつま風力発電事業に係る計画段階環境配慮書の公表について|日本風力開発
https://data.jwd.co.jp/info/minamisatsuma/

この「配慮書」というものは、環境アセスメント(環境影響評価)の第一段階で、具体的な評価に入る前に、まずどのような点を評価するべきかという事項をまとめたものである。ちなみにこの後は、「方法書」「準備書」「評価書」「報告書」が順を追って作成される。もちろんこれらについても意見は言えるが、かなり専門性が高くなってくるので、一般市民から意見を言いやすいのは「配慮書」かと思う。「これについても考慮しろ!」というのは比較的簡単だ。

しかし公開された「配慮書」は300ページ以上あり、読むだけでも大変だ。そこで大まかな点について伝え、私が気づいた点をここに記しておきたい。私は意見を出すつもりだが、みなさんも出していただければ心強い。

まず、事業計画域は次の図の赤線内である。風車は基本的に尾根に近い場所に設置されるが、具体的な配置は未定(大浦側なのか、加世田側なのか、その両方なのかも未定)。風車の大きさは、先述の通り高さ最大180m、ブレード(羽)の長さは65mということである。環境アセスでは想定する最大の計画に対して行う(でないと、途中で少しでも規模を大きく変更するとやり直しになるため)ので、このサイズの風車が現実的に建設されるかは不明だが、とりあえず馬鹿でかい風車が計画されている。

「配慮書」p.206より

どのくらい大きいかというと、長屋山の標高が513mなので、風車の高さはその35%にもなる。景観を乱すとかいうレベルではない。なお、鹿児島県では「鹿児島県風力発電施設の建設等に関する景観形成ガイドライン」を定めている。

【参考】「鹿児島県風力発電施設の建設等に関する景観形成ガイドライン
https://www.pref.kagoshima.jp/ac10/infra/energy/new/keikangaidorain.html

このガイドラインの趣旨を簡単に言うと、「大きな風車を作るにあたっては、主要な眺望景観を阻害しないよう配慮しなさい。地域固有の景観を阻害しないよう配慮しなさい。特に山の稜線を乱さないようにしなさい」ということになる。

「だったら、山の高さの35%にもなる風車は稜線に建てようがないじゃん」と思うかもしれないが、ポイントは「主要な眺望景観」にある。つまりどこから見るかが重要だ。全方位で見て景観を乱さないというのではなく、現実的には「主要な眺望点」から見たときの景観を配慮するという解釈で環境アセスが行われる。では、今回の場合はどうなっているかというと、「配慮書」で挙げられている「主要な眺望点」は次の図の通りである。

「配慮書」p.273より

全部で20の眺望点が挙げられているが、①サンセットブリッジ、②吹上浜展望台、③高崎山展望所、④谷山展望所…など、ほとんど全てが観光的な展望所である。つまり、住民が日常的に目にする場所からの眺望は全く考慮されないことになる。これは大問題だと私は思う。「山を見ると故郷に帰って来た」と思う人が多いように、日常的に目にする山の景観というのは心理的に重要だ。鹿児島で桜島に思い入れがある人が多いことでもわかるだろう。長屋山の眺望も雄大で、住民の重要な心理的景観となっている。「景観形成ガイドライン」でも「地域固有の景観」という言葉でこのことが表現されている(と思う)。みんなが大事に思っている景観は「地域固有の景観」と見なせる。

よって、環境アセスで評価する「主要な眺望点」をどこにするかは地域住民との協議によって決めるべきだと私は思う。そうでなければ、各集落、主要道路、学校、市役所など、地域住民が日常的に風車を目にする場所を網羅的に挙げておく必要がある。

それから気になるのは騒音だ。図に書き込まれている通り、大浦の集落のほとんどはこの計画域の2km圏内に位置し、大笠中学校は約1kmしか離れていない。「配慮書」では、「重大な影響を受ける可能性があると予測する(p.208)」とされている。当然だ。だがその後で「しかしながら、風力発電機の配置等の検討にあたって主に以下の点に留意することによって、重大な環境影響が回避又は低減されるものと評価した(「以下の点」は略)(p.209)」という。これはさすがに大雑把すぎる。そもそも風車の具体的な配置も決まっていない状況で「環境影響が回避又は低減される」はずだ、というのは何の根拠で言っているのか。

この他、「配慮書」を読んでいると「大丈夫なのかな?」と思うことがいくつかある。「配慮書」で重要なのは、「これから何を評価するか」を決める、ということなのだが、工事中のことはほとんど評価項目にしていないのは特に気になった(「配慮書」p.201~202)。例えばこの工事では大きな風車の羽を運ぶ必要があるので林道を大幅に拡幅する必要があると思うが、造成などに伴う水の濁りについては「工事に伴い生じる一時的な影響であり、今後、環境保全措置を講じることにより重大な影響を回避、低減可能であることから選定しない(同)」としている。しかし「回避、低減可能」であるかどうかを評価するのがそもそも環境アセスメントの役割ではないのか。

確かに工事は一時的(といっても3年くらいかかる)だが、その間に水の濁りで田んぼの用水が埋まれば影響は全然軽微ではない。他にも「工事に伴い生じる一時的な影響」だからといって評価項目で選定されていない項目を大まかに挙げると、「騒音及び超低周波音」「振動」「水環境の有害物質」「動植物、生態系への影響」「人と自然の触れあい」「廃棄物等(残土含む)」「放射線」がある。評価しない項目が多くないか。さらには、撤去工事については全く評価の対象になっていない。風車の稼働年数は30年だそうだが、30年後の撤去工事の影響も評価すべきでないか、ちなみに現在坊津では風車の撤去工事が行われているが、この工事のせいで雨が降るたびに大量に土砂が流れて坊の湾が濁っているそうだ。

なお、「動植物、生態系への影響」については、工事中の影響は上述のように評価しないものの、さすがに施設が存在することによる影響は評価対象である。しかし、私は動植物については疎いので「配慮書」が誠実に作られているのかどうかよくわからない。大浦干拓は貴重な渡り鳥がたくさん来ていると聞いているが、それが「配慮書」に反映されているのか…。これはぜひ詳しい人に見てもらいたい。

それから、長屋山には「神代聖蹟長屋」という神話の顕彰碑がある。これは、『日本書紀』で、天孫ニニギノミコトが「吾田の長屋の笠狭の御碕」にやってきたというその「長屋」であるということで、戦争中に造られたものだ。この顕彰碑は「国家神道」の遺物ということで戦後は史蹟・文化財としては指定されなかったが、戦後の考証を経ても長屋山が神話の地であることは地名辞典等で記載されている。しかし「配慮書」ではこのことは全く触れられていない。神話の土地に風車を建てるという心理的影響も評価すべきと思うのは私だけだろうか?

このように、「配慮書」はいわゆる「お手盛り」的な感じが濃厚に漂っている。そもそも風力発電の風車は、地元住民の多くには何の恩恵もない。工事に悩まされ、景観は乱され、30年の稼働後にちゃんと撤去されるのかどうかも心配だ。できて欲しくない、というのが本音である。

ちなみにこの事業を手掛ける「日本風力開発」は、洋上風力発電事業をめぐる汚職事件を起こしている。秋本真利・元衆議院議員が「日本風力開発」の(元)社長から国会質問の見返り等として計約7200万円の賄賂を受け取ったとして逮捕起訴され、また社長も在宅起訴されて裁判で係争中である。結審するまでは有罪とはいえないが、お金の接受自体は事実で、それが国会質問の見返りであったかどうかが争点になっているところを鑑みると、「日本風力開発」が政治への影響力を持ちたいと思っていたことは確かだ。それは、権力を味方につけて地域住民を黙らせるためだ……とまではいわないが、実際、風力発電は地域住民にとっては単なる迷惑施設であることが多いので、政治対応が必要になるのかもしれない。

大浦町はただでさえ過疎化している。だから「風車が出来たらなおさら過疎化が進む」とは言いづらく、風車の有無とは関係なく過疎化は進むだろう。しかし風車のすぐ下で生活したい人はいない。環境アセスでは評価が難しいが、今住んでいる人の不利益だけでなく、風車があることで徐々に人が住まなくなっていくという影響も考慮したいところである。

いろんな面から誠実に考えて、地域振興策まで講じて事業を進めるならまだ理解はできるが、現段階の「配慮書」はちょっと雑な感じが否めない。みなさんも「配慮書」を見てみて、ぜひ意見を出してほしい。

なお、意見は南さつま市役所に設置された意見書箱へ投函するか郵送で、電子メールでの提出はできません。

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