2016年10月13日木曜日

「砂の祭典プラス」

2017吹上浜砂の祭典実施推進本部会議というののメンバーになった。

以前、「人間讃歌としての砂の祭典へ」という「砂の祭典」批判の記事を書いた。正直言うと、「砂の祭典」の時期は農繁期なので会議のメンバーになるのはあんまり前向きではなかったが、こういう発信をしている以上、公の席で意見をいう機会が与えられたら断るのはフェアではない。

というわけで、先日初回会議があったので出席してきた。

内容は、来年2017年の「砂の祭典」をどうしていきましょうか、というものだ。でも出席してみてわかったのは、これは「実施推進本部」という名前はついてはいるが、その実態は「連絡会議」のようなもので、青年会議所とか文化協会とか、それから役所の他部署といった関係機関に対する事前説明と調整を行う場だということだ。

だから企画立案機能なんかはほとんどなくて、それはこの会議に付属(?)している「デザイン会議」というのが担っているらしい。

どうやら、元々はこの実施推進本部で企画立案をしていこうということだったらしいが、各団体の代表者が席を連ねている関係上、「意見ありませんか?」…シーン…みたいなことが続いて、 検討機能が失われ、説明機能だけが残っていったみたいである。

要するに、この会議のメンバーにはアイデア面はあまり期待されていないようだ。が、黙って席に座っているのは無駄なので、自分なりに意見を言っていきたい。

さて、先日の会議ではまず、「このイベントの目的は何で、費用対効果は何で測定しているのか」と質問してみた。それに対し、「地域活性化を目的としていて、費用対効果は毎年計測しているわけではないが、3年ほど前に鹿児島経済研究所(鹿児島銀行の関係機関)に市内の経済効果を見積もってもらったところ3億円くらいあり、それが効果だと考えている」といった回答があった。

その後、来年の「砂の祭典」の検討状況の説明があり、来年は30回記念なので例年とは違ったことをやりましょうということで、大まかには「派手なことをやる」「市民の参加を促す」の2つの方向性が示された。「派手」については私はあまりアイデアがない人間なので措くとして、ここでは「市民の参加を促す」について考えてみたい。

会議では、祭典会場で「郷土芸能を披露」とか「旧市町村ごとの物産販売」とかのアイデアが示されていて、そういうのもいいと思うが、そもそもこのイベントに求める「効果」が地域経済への貢献なのだとしたら、直接的にそれを形にする方がよいように思われる。せっかく何万人もの人がこのイベントに訪れるのだから、砂の祭典だけを見て帰るのではなく、市内の他のところにも足を伸ばしてほしい。

そのためには、砂の祭典そのものの内容を充実させるのと同時に、砂の祭典とコラボした(というより同時期に他の場所でやる)イベントの実施や、市内の他の観光情報の発信が重要だと思う。そもそも、砂の祭典公式WEBサイトを見ても、これまで市内の観光情報一つ載っていなくて、イベントの説明に終始しているので、これをまず改めるべきだと思う。波及効果を望むのであれば、祭典の周辺の情報も発信していかなくてはならない。

それで参考になるのが、蒲生という街の「カモコレ」という取組だ。

「カモコレ」は、「蒲生ワクワクコレクション」の略称で、これは例年2月〜3月の約1ヶ月間、蒲生町内で行われるさまざまなイベントを寄せ集めたものである。「寄せ集め」というと言葉が悪いかもしれないが、これが偉いのは「ちゃんと寄せ集めている」ところで、「カモコレ」という冊子を作って全イベントの情報をまとめ、しかも申込事務局を一元化(lab蒲生郷というNPO法人が担当)しているのである。

イベントの企画というのは、ちょっと何かやっている人はすぐに思いつくものだが、結局苦労するのは人集めである。普通の人は知り合いに声を掛けるくらいしか手段がない。インターネットでお知らせすればいいじゃんと思うかもしれないが、インターネットの力は実際には(特に田舎では)ものすごく小さい。だから、「アイデアはいいけど、人が集まらないよね、きっと」ということでポシャる場合がとても多いと思う。

「カモコレ」の場合、共通の冊子やWEBサイトで事務局が広報してくれるわけだから、この一番苦労する人集めが自然にできる仕組みになっているのである。しかも、一度カモコレ(の中のどれかのイベント)に参加した人は、他のイベントも少なくとも冊子上は目にすることになり、「今度はこれにも参加しようかな」という人も出てくる。それぞれのイベントの集客力は僅かでも、それを寄せ集めることによって大きな広報力になるのである。

こうしたことから、最初は本当に寄せ集め的だったイベントが徐々に充実してきた。「こういう仕組みがあるなら私もイベントをやってみたい」という新規参入者が増えてきたからだ。共通の仕組みがあることでイベントの質も高まってきた。そして最近ではワークショップ・講座系の取組が周年で行われるようになり、「学びのカモコレ」と題した一種のカルチャーセンターみたいになってきている。

結局、「カモコレ」の本質的な価値は、町内各所で行われていた小さなイベントの情報をまとめ、実施時期を揃え、可視化することで集客力を高め、イベントをやるハードルを下げて町民の自主性と企画力を育てていったことである。こういう取組が、「砂の祭典」でもできないものか。

「砂の祭典」は実施期間が約1ヶ月ある。「カモコレ」とほぼ同じくらいの期間である。この間に、市内各所で行われるイベントの情報をまとめて「砂の祭典」のWEBサイトやチラシで合わせてお知らせするのはどうだろう。「砂の祭典」を見に来た人も、それだけを見て帰るより、ついでにどこか行ってみたいと思っているはずである。つまり「砂の祭典」に少し「プラス」してみたいはずだ。

何をプラスのメニューにできるのかは市民の方で考える。イベントといっても、最初から大それたことを考えるのではなく、お店の特売みたいなものでもいいと思う。今あるイベント(えびす百縁市みたいな)の時期をずらしてくるのでもいい。とにかく、せっかく遠方から砂像を見にお客さんが来てくれるのだから、南さつま市を巡ってもらう、その足がかりになればよい。

「砂の祭典」に「市民の参加を促す」のはいいとしても、よくないパターンとしては、別にやりたくもないことをやらされたり(郷土芸能を本当に会場で披露したいと思うんだろうか?)、買いたくもないチケットを買わされたり、小学校や中学校といった動かしやすいところが強制参加させられたりすることだ。こういうことをすると、動員をかけられた方は本当に疲れてしまう。主体性なく関わったイベントというのは本当に疲れるのである。

疲れたら、「地域活性化」とは逆である。「地域活性化」という目的そのものが曖昧だ、と私は思うが、少なくとも地域活性化を掲げるなら、市民の元気が出る「砂の祭典」にしないといけない。「砂の祭典」で疲れてしまって、本当にやりたかった他のことができなくなってしまったら本末顚倒である。

地域活性化とは、結局は市民の自主性が高まり、活動量が高まることだと私は思う。活性化した地域というのは、住民が、それぞれやりたいことに楽しく取り組んでいる地域だ。 これが「砂の祭典」の目指すところなのであれば、ことさらに「市民の参加を促す」よりも、「砂の祭典」をうまく活用してもらって、それぞれがやりたいことを実現できるプラットフォームになっていくべきだ。

来年の「砂の祭典」は第30回記念。これを期に、「砂の祭典」は「砂の祭典プラス」へ。「砂の祭典+スキューバダイビング」「砂の祭典+物産館めぐり」「砂の祭典+カフェでまったり」といった楽しみ方ができるように、もっと正確に言えば、そういう楽しみ方を可視化できるように、そしてそのマーケットに気軽に参入できるようになってもらいたい。

5 件のコメント:

  1. サンプルになれば幸いです…

    砂の祭典2ステージ化の際、レース参加者に砂像でも観てもらえればと、たしか2010年から日程を組み直しました。(5月第2日曜)

    ↓2016金峰レクの森のクロカンフェスティバル↓
    https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=978004175652687&id=383660275087083

    市民の任意団体「かせだサイクリング倶楽部」の主催です。
    (元々は行政の肝いりで作られました。現在行政からは、ツールド南さつまの市民ボランティア協力団体として捉えられてると思います)
    毎年会場も近接、日程も重なっていますが…

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    1. ポンテはしもとさん、コメントありがとうございます。

      これはよい取組だと思いました。これが、砂の祭典のWEBサイトでお知らせされていればもっといいと思います。わたしもこういうイベントが近くで行われていたって、全然知りませんでしたからね。実際に相乗効果的に参加する人は少なくても、いろんなことがやられていて賑やかだ、という状態を作っていくのは大事なことだと思います。

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  2. 吹上浜砂の祭典は昔は注目された時代もありますが、今では全国的に鳥取県に注目を奪われてしまいましたね。砂丘関係の農作物やイベントなどPRの力の入れ具合で負けてしまいました。砂像の美術館もあるみたいですし、完全に完敗してます。
    市民が負担に思うイベントじゃなく、自主的に参加したくなるようなイベントに変えなきゃ負の遺産と思われかれない。来年もまた行きたいと思えるような魅力あるイベントにしなきゃ未来はない!

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    1. ニャン吉さん、コメントありがとうございます。

      仰る通りですね! 結局は、ホンキがあるかどうか、というところだと思います。いつのまにか、マンネリになってしまって、本腰が入らないイベントになってしまいました。鳥取の砂の美術館は、プロデュースは南さつまの茶圓さんがやっているのに連携も何もなくて残念ですよね。私は、実施推進本部の会議では多少煙たがられてるような気がしますが、今年限りのことと思って好き勝手言わせてもらおうと思っています。いい方向にいったらいいんですけど。

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  3. コメントありがとうございます。
    開催期間を再検討しても良いと感じます。
    5月開催より夏休み期間中に行った方が来場者数は格段に上がると思います。台風シーズンとの兼ね合いもあると思いますが、海で行うイベントですので季節感のある夏場に花火や海水浴やライヴなど色々と楽しめる物を作りやすいと思います。
    砂像以外にも魅力あるものを提示してSNSなどで拡散出来るように仕掛ける事が必要でしょう!
    南さつま市の観光小旅行を砂の祭典を織り交ぜたプランとして全体に波及出来るような物を作るなどしても面白いと思います。
    大変だと思いますが、声なき市民の代表として程々に頑張って頂きたいです。

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