2015年10月12日月曜日

人口減少の中で「地域の活力」を維持するために(パブコメ募集中)

現在、南さつま市では、まち・ひと・しごと創生総合戦略「光りが織り成す協奏プラン」のパブコメを行っている。

これについては、策定にあたって市民からの意見募集を行っており、私も以前ブログに書いたとおりいろいろ考えて8件ほど意見を送った。

【参考】送った意見の元になったブログ記事
ざっと見たところ、私の送った意見はひとつも採用されていないようで正直ガッカリしているが、めげてもいられないので、パブコメにもまた違った角度から意見を提出してみようと思っている。

もう一度この「まち・ひと・しごと創生総合戦略」について説明すると、要するに「これから人口減少や高齢化が激しくなるわけだけど、どうする?」という方向性を定めるものである。

私は、人口減少や高齢化によって失われるものは「地域の活力」だと思う。よって、地域の活力を高める施策が必要だ。そして「地域の活力」というのは結局は一人ひとりの活動量に起因するのだから、人口減少の中で「地域の活力」を維持するには、一人ひとりの活動量を上げていなくてはならないということになる。

それをネガティブな面で言えば、自治会の奉仕活動を今よりもっと頑張らなくてはならないとか(草払いの一人当たり面積が増えるなど)、PTA活動の負担が増えるというようなことになる。でもそんなことを今まで以上に頑張ってまで、抽象的な「地域の活力」とやらを維持したいと思う人は少数派である。

だから一人ひとりの活動量を上げるには、みんなが自分の好きなことに取り組む必要がある。好きなことならたくさんやっても負担にならない。だから、人口減少の中で「地域の活力」を維持するためには、誰もが「好きなことに思いきり取り組める」ようになるような環境整備が必要だというのが私の考えだ。

一方で、高齢化によって現役世代の負担が増えることも間違いない。特に介護が必要な老齢の両親を抱えた人なんかは、「好きなことに思いきり取り組める」わけもなく、自分を犠牲にしている現状がある。施設に入れるにしても家計的に厳しかったり、希望の施設に入れなかったりして困っている人も多い。

それに、「好きなことに思いきり取り組む」にも先立つものがいる。 私自身が経済的には底辺の生活をしていて、ある程度のお金がないと趣味もへったくれもできない。それなのにただでさえ少ない収入が社会保障費に取られていくとすれば、どんどん社会は萎縮してしまうだろう。

だから煎じ詰めれば、人口減少や高齢化への対応策として最も必要なことは、若者(現役世代)の労働生産性を上げて所得を向上させること、に尽きるのではないか。所得が増えれば好きなこともできるし、所得が増えなくても自由に使える時間を増やせる。それにお金があれば高齢者の介護もそれほど負担なくできる。

そして、これは私の持論でかつ極論だが、日本の労働生産性の上昇を阻んでいるのは50代以上の人たちの存在である。
上の図でわかるように日本の人口ピラミッドには65歳くらいを中心にして団塊世代があり、この世代が日本の社会を長期低迷に陥れている主要な要因であると私は思う。もちろん、この世代の人一人ひとりに大きな問題があるというわけではない。そうではなくて問題はこの人口構成そのものである。

こういう図が出ると、メディアではすぐに「社会保障費の負担が〜」という即物的な話題になって、それはそれで大きな問題だがそれよりもっと大きな問題がある。それは心理的な問題で、「元気な高齢者」が多すぎる社会は、若い人の考えが通りづらい社会になってしまうということだ(50代はまだ「高齢者」ではないですが)。

こういう社会では、企業や団体での議論が時代遅れなものばかりとなり、若い人の真っ当な意見が通らなくなる。それにより、様々な活動が世界の潮流から乗り遅れて、ますます経済力・活力がなくなり時代遅れが横行する。いや、すでに日本社会はそういう悪循環に陥っていると思う。

一方、戦後すぐの1950年の人口ピラミッドを見てみるとどうか。この社会は随分と活気があったはずだ。事実若い人が中心になって、どんどん新しいことに取り組んでいた。無様な失敗も多かったが、今のように間違いを恐れて萎縮するようなこともなかった。もちろん戦争の傷跡の残る時代であり、ものも金もなく、人々の生活は苦しかった。この頃は「好きなことに思いきり取り組める」ような社会ではなかった。

だが若者の労働生産性を上げるためには、こういう社会を目指す必要がある。つまり、若者が中心になって物事を動かして行く社会に。引いては、今の時代にあった効率的な働き方、暮らし方へと変えていく必要がある。

話を戻して、南さつま市のまち・ひと・しごと創生総合戦略(案)を見てみると、このような視点はほとんどないと言わざるを得ない。この戦略の主要な目標値(2020年に向けたもの)は、
  • 新たな産業の事業化 5件
  • 延入込客数 200万人
  • 企業誘致や就業支援等による新たな雇用 100人
  • 市民の産業関連施策に関する満足度 10%増
  • 安心して暮らせるまちと感じる人の割合 10%増
  • 少子化関連施策に関する満足度 10%増
の6件なのである。私なら、基本目標に「生産年齢の平均所得を10%上昇」を掲げたいところだ(※)。その10%を何で稼ぐかは別に考えなくてはならないにしても、これくらい実現できなくては人口減少の中で「地域の活力」を維持していくことなんて出来るはずがない。

人口減少社会への対応策は、「一億総活躍」などというものではなく、平成版「所得倍増計画」でなくてはならないと思う。

【情報】
パブリックコメント まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略(案)について
→10月19日までなので期間がありませんが、ご関心があるところだけでも見て意見を出してみて下さい。最初に南さつま市の人口動態に関する説明、市民へのアンケート結果があって、36ページからが戦略の本体です。

パブリックコメント 「第2次南さつま市行政改革大綱(案)」に対する意見募集について
こっちはついでですが、行政改革大綱についても10月25日までパブコメしています。

※正確に言えば、労働生産性を上げることが必要であり、所得は上昇しなくてもいいと思う。というのは、労働時間を短くしてもよいのであって、究極的にいえば暮らしの「ゆとり」が増えればよいのである。でも行政が掲げる目標である以上、計測不能な「ゆとり」よりも「所得」くらい味気ない目標の方がいいと思う。

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