2015年4月7日火曜日

インターネットで農産物を売る(その1)

インターネットショップ「南薩の田舎暮らし」をオープンさせたのは2012年の1月。気づいたら丸3年が経過していた。

未だにさほどの売り上げがない弱小サイトなので大した実績もないが、「インターネットで農産物を売る」ということを実際にやってみていろいろ思うことがあるので丸3年という節目(若干過ぎているが)に書いておこう。

最近、自治体が農産物販売のためのインターネットショップ(への誘導ページ)を立ち上げるなど、農産物のブランド化や知名度のアップ、高価格での有利販売といった目的で農産物のインターネット販売が注目を集めている。

それも、以前は農家個人がショップサイトを立ち上げるのが主流だったが、最近になって農産物販売のプラットフォーム的なサイトもたくさん出てきたし、STORESのように極めて簡単に、しかも月額基本料無料でインターネット販売できるサービスもあるので、もう誰でもインターネットで農産物が売れる時代になったと思う。

ところが実感として、農産物のインターネット販売というのはかなり難しい

第1に、農産物というのは薄利多売な商材であり、単価がとても安い。しかもかさばるものが多い。よって配送料が割高になる。Amazonで「配送料無料」に慣れた消費者(私もそうです)には、1000円とか2000円の農産物を買うのに1000円近い配送料を出すのは非常に抵抗感がある。

例えば、「南薩の田舎暮らし」ではポンカン10kgを3000円で売ったが、これにかかる実費送料は関東だと約1000円である。だが自分がお客さんなら、3000円のものを買うのに1000円の送料はいかにも割高でイヤな感じがするので、「南薩の田舎暮らし」では送料を全国一律500円にしている。

市場や農協への出荷などと比べれば確かにインターネット販売は単価が高く設定できるが、このように送料の一部を負担することまで考えると、実は物産館などで販売した方が利益率が高い場合も多い。

第2に、インターネットで売れるものはかなり限定されているということがある。例えば、物産館であれば大抵の農産物はそれなりに捌ける。だが、インターネットでは普通の野菜を普通に売っていても全然売れない。そういうのは近所の八百屋とかスーパーで買えるので当然の話である。

なので、インターネットで販売するものは希少・高品質などの付加価値がある農産物に限られるのであるが、そういうのはまず生産するのが難しい。例えば「南薩の田舎暮らし」の場合、無農薬の柑橘というのがそれに当たる。これも2014年は虫害で大損害を受けており、ほとんど売り上げがなかった。インターネットを通じて特殊なものを販売するより、普通の野菜や果物を普通に生産して市場や農協に出荷する方が商売として安定的かつ簡単である。

第3に、インターネット販売はかなり手間がかかる。ショップサイトの構築は趣味の世界(こだわらなければHTMLを覚える必要もない)だから除くとしても、商品写真の撮影、説明文の推敲、受注管理、梱包、配送といったことは農作業の合間にやるとかなり面倒な作業だし、その上Facebookとかブログでそれなりに情報発信をしないとなかなかトラフィック(要するに訪問数)が伸びない。

しかも、先述の通り農産物は薄利多売な商材なので、こうした面倒なことをすると、タダでさえ低い利益率がさらに低くなる。

こうなると、インターネット販売なんか辞めて物産館・JA・市場・量販店への卸など、伝統的な農産物流通に乗せた方が、よほど商売として上手な感じがしてしまう。正直、今なぜ農産物をインターネットで販売しようというブームが来ているのか、いまいちピンと来ない。穿った見方をすれば、単にIT屋さんに踊らされてるだけなんではないだろうか?

しかし、インターネット販売の意味はちゃんとある。

それは、究極的にはお客さんとの対話である。

縷々書いたように、インターネット販売は一言でいうと非効率的なのだが、なぜ非効率的なのかというと、(実際にはやりとりをしなくても潜在的に)お客さんと対話しなくてはならないからだ。というか、対話をするために販売する。販売そのものが目的ではなくて、対話自体が目的なのだと私は思う

ちなみに、「南薩の田舎暮らし」では、始めて注文をくれた方にはほぼ必ず(忙しい時を除く)「どうして当店をお知りになったのですか?」とメールで聞くようにしているが、そうしたら大変丁寧な返信をくれる方も多い。私は、そういう無駄話をしているからインターネット販売がなおさら非効率的なのかもしれない。でも無駄のない効率的販売をしたいなら、わざわざインターネットで販売する意味はない。物産館に持っていく方がずっと簡単で効率的だ。

もちろん、これはサイトの目的や収益構造によっていろいろなケースがあるわけで、インターネット販売が効率的な場合もあるだろう。それにインターネット販売の意味を「対話が目的」と書いたが、それはあくまで私の場合のことで、一般化はできない。

だが、よほど付加価値の高い特別な農産物を販売するのでない限り、やはり「対話」はかなり重要だと思う。では何のための「対話」なのかという話になるが、それは次回に書くことにする。

(つづく)

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