私は「一応」農業を営んでいるのだが、それ以外にもいろいろと(お金にはならない)アレコレをやっているので、時々「何を作っているの?」と農家なのかどうか訝しがられる時がある。
私がメインにしたいと思っているのは果樹、それも柑橘類で、今現在、ぽんかん、たんかん、しらぬい、ブラッドオレンジ(苗木)、ベルガモット(苗木)、ライム(苗木)、グレープフルーツ(苗木)などなどあわせて約60〜70aを栽培中である。
そんなわけで、柑橘類の来し方行く末にはひとかたならぬ興味がある。特に心が惹かれるのは歴史の方だ。 今では世界中で生産され、果物としてはおそらく世界最大の生産量を誇る柑橘類が、いかにして伝播し、品種改良され、消費され、人類の歴史と文化に影響を及ぼしてきたかということを、直接には農業と関係なくとも、深く知りたいと思う。柑橘類の濫觴からこうしたことを説き起こせば、きっと「柑橘の世界史」が出来るに違いない。
それに関して、今年に入って最近刊行された2冊の本を読んだ。まずはピエール・ラスロー著『柑橘の文化誌』。そしてトビー・ゾネマン著『Lemon: A Global History』。『柑橘の文化誌』の方は副題が「歴史と人とのかかわり」とあり、それなりに歴史の話も出てくるが、体系的な叙述というより著者の興味関心の赴くままに述べたという風で四方山話的である。『Lemon』はレモンを中心とする柑橘の歴史が端正にまとめられている良書だが、「世界史(Global History)」と銘打ちながら結局はヨーロッパとアメリカの話しか出てこないのが問題である。
だがそもそも柑橘の原産地はインドや中国なのだから、話は東洋から始まるはずである。2冊とも、話がヨーロッパとアメリカの近代史以外の部分が簡単に過ぎる。それに、これらの本を書いているのは柑橘の専門家というわけでもないし(ラスローさんは科学者で、ゾネマンさんはジャーナリスト)、柑橘類の栽培技術という点について等閑に付しているきらいがある。
そこで、浅学菲才の身ではあるが、東洋の話を織り込むことと、柑橘栽培の技術発達についても触れることにして、私なりの「柑橘の世界史」を書いてみたい。とはいっても、この2冊に書かれていることは大いに参考にさせてもらうし、特に16世紀以降についてはほとんど独自の知見を付け加えることはできないかもしれない。そして、このブログ上で簡潔にまとめるだけだから、柑橘の世界史の大まかなアウトラインをなぞるに過ぎない。それでも、こういうテーマで体系立った記述をすることは自分の勉強にもなるし、今後の柑橘産業を考える材料にもなるだろう。
これから徐々に書いていこうと思うので、気長におつきあい頂ければ幸いである。
【参考】これまでに書いた柑橘の歴史に関する記事
世界史から見るタンカンの来歴
なぜホテルの朝食にはオレンジジュースが出てくるのか?
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