2016年2月23日火曜日

「たんかんのオランジェット」と規格外品の有効利用の問題

今日、タンカンの発送作業を行った。

有り難いことに既にたくさんの注文をいただいており、出だしは順調。今年のタンカンは割と味はよいと思うので、ぜひご賞味ください。

【南薩の田舎暮らし】無農薬・無化学肥料のタンカン

ところで、この写真がうちのタンカンだが、タンカンをご注文くださった方は「届いたのはこんなにキレイなやつじゃないぞ!」と思うかもしれない(すいません…)。それもそのはずで、これは収穫した中でもとりわけ大きくて外観のキレイな最上級品だけを選りすぐったものなのである。

市場に出回っているものの中には、それこそ宝石のように美しいタンカンがあるので、この程度で最上級品なんて……と思うかもしれない。というか特に同業者の方はそう思うはずである。でも今の自分の栽培技術の中では、無農薬でこの水準ができたら最高だと思うものを選んだつもりだ。

で、どうして最上級品だけを選りすぐったのかというと、これはそのものを販売するためでなくて、実は「たんかんのオランジェット」という今一番売り出し中のお菓子を作るための材料なのだ。

たんかんのオランジェット
【参考】オランジェットって何? という方は「南薩の田舎暮らし」のこちら↓の記事をどうぞ。
2月5日のレトロフト金曜市で「たんかんのオランジェット」を販売します

先日、この商品を引っ提げて、商工会がやっている品評会(?)みたいな会に出たら、「規格外品のタンカンを使ってみてはどうか?」という意見が出た。でも皮まで丸ごと使うというこのお菓子の性質上、やはり皮もキレイなものでないと食感も見た目も悪いし、大きさが揃っていないと商品にならないので、やはり大玉で外観秀麗なものを使う以外ないと思う。

最近の農産加工の話題では、「今まで捨てていた規格外品を使って作った」的なものがよく流布されていて、農産加工といえば「青果で流通しにくいB級品の有効利用」という側面ばかりが強調されているように感じる。

しかし、実際に農産加工に取り組んでみればすぐに分かるように、規格外品のように大きさや品質が揃っていない素材を使って加工品を作るのは大変手間がかかる。例えば、ニンジンを作っていると一定割合で又根のニンジンができるものだが、又根のニンジンは洗浄にも皮むきにも手間が余計にかかるし、ニンジンスティックのようなものを作ろうとすれば歩留まりも悪い。加工品づくりの経費がほぼ人件費であるとすれば、そういう扱いにくい素材を無理して使うより、同じ大きさで規格化されたニンジンを使って効率よく製造する方がよほど利益が大きい。

それに、加工品は素材の味次第なところがあり、品質の揃っていない素材を使うのは味の面でも不安が残る。見た目が悪くても美味しい果物や野菜というのがあるのは事実だが、実は美味しい果物や野菜は外観もよいことが多い、というのも事実である。間違いなく美味しい立派な素材を使う方が、品質の高い加工品が楽に作れると思う。

そもそも、今は「農産加工品戦国時代」とでも呼びたくなるような時代である。各地で、オシャレ・今風の農産加工品が次々に開発されている。そんな時に「今まで捨てていたものを有効活用できないか」というような消極的な理由で農産加工をしては成功はおぼつかないような気がする。やはり、「とびきり美味しいものを食べて欲しい」という積極的な理由で開発に入るべきだと思う。

もちろん、それが結果的に規格外品の有効利用になったらなお素晴らしいことである。開発の段階で「廃棄をなくそう」ということを目的の一つにするのもよいことだ。しかし、栽培管理によって収穫物の規格をなるだけ揃える(=規格外品を減らす)という方が農家の本道なのに、規格外品で作った加工品が成功したとすると、むしろ積極的に規格外品を作って材料を確保しなければならないという矛盾が生じる。加工品を作るなら、加工品用の規格を作り、その規格に沿って栽培管理していくという方が結局は効率的であり、規格外品のような量的にも質的にも頼りない存在はアテにするのはリスクである。

規格外品の有効利用は個人の農家レベルで考えてもダメで、やはり経済連(県単位のJA)のような規模で考えなければならない問題だろう。

ちなみに、鹿児島大学の学生がエコスイーツというプロジェクトをやっていて、これは生ゴミからつくった堆肥を使って育てた野菜を使ったスイーツの製造・販売なのだが、これも最初は「捨てられている野菜を救う」ということを考えていたようだ。しかし調査してみると、規格外の野菜などはちゃんと物産館などで売られていて、本当に捨てられているのは思ったほど多くないということがわかった。

こうして、当初は規格外のカボチャの有効利用がメインだったものの、今はむしろスイーツづくりのためにサツマイモを育てるということがメインになっており、やはり「加工品用の規格に沿った栽培管理」の方に重点が移っている。サツマイモ栽培に取り組んだ理由もWEBサイトでの説明によれば「「より高品質な素材を供給したい」という思いを実現するため」とされていて、やはり規格外で品質の安定しない素材を相手にするよりも、高品質な素材を使った方が間違いない、ということを学んだ結果ではないかと思った。

というわけで、農産加工というと「規格外品の有効利用」ということをすぐ思い描きがちであるが、実際にはそういう虫のよい話はそうそうないのである。

話が随分逸れてしまったが、この、私なりに「どこへ出しても恥ずかしくない最高級のタンカン」をつかって作った「たんかんのオランジェット」とクッキーとコンフィチュールのセットが今ネットショップで限定販売中なので、こちらの方もよろしくお願いします!

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