この時期、近所の物産館では「サワーポメロ」がものすごく安売りされている。3個くらい入って150円とか、そういう激安値である。これはブンタンの仲間だから大きいのが3個入っていれば2キロ近くあるが、それが150円だから全然利益は出ない商売だ。
しかしサワーポメロ、といってもピンと来ない人が多いに違いない。サワーポメロは通称で、品種名は大橘(おおたちばな)という。熊本では「パール柑」と呼ばれている。といっても、やはりピンと来ない人が多いであろう。サワーポメロは、鹿児島・熊本のご当地柑橘ともいうべきものだ。
これが激安で売られているのはいろいろ理由があるが、基本的には市場性があまりないからだと思う。つまり、あまり市場では取り扱われていない。市場で流通しないから売りにくい。売りにくいから安くなる。ではどうして取り扱われていないのか、というと、多分生産量が少ないからだ。
ところが面白いことに、このあたりで柑橘類を生産している人の畑には、隅っこの方に必ずといってよいほどこのサワーポメロが1、2本植えられている。自家用で育てているのである。自家用だから元より出荷のことは考えていない。だがたった2本でも収穫は結構な量になるから、余った分を物産館に出しているのである。余ったものの処分だから150円くらいの激安に設定されているのだと思う。
しかしここに一つ不思議がある。ミカン農家自身が自家用に植えるくらいだから美味しい柑橘のはずなのに、なぜ生産量が少なく市場性があまりないのだろうか?
実際、「柑橘類の中でサワーポメロが一番好き!」とか「柑橘類はサワーポメロ以外は食べない」という人もいるくらいなのだ。ちょっと好き嫌いは分かれる果物で(というのは皮が剝きにくいのが一番嫌われる点)、みんなに好かれるというものではないが、はまる人にははまる味だ。
どんな味かというと、ブンタンのぷちぷち感はそのままにすごくジューシーにして甘酸っぱくした感じである(サワー(酸っぱい)が冠されているがそれほど酸味は強くない)。それから香りがすごく爽やかなのも特徴である。剝きにくい皮のことを考えなければ、もっと市場で取引されてもおかしくない。
しかも、生産量の少なさは栽培が難しいのが理由ではない。というか、柑橘類の中では栽培はどちらかというと容易な方ではないかと思う。ではなぜ生産量が少なく市場性があまりないのか?
私の推測だが、それはこのあたりの人びとが「サワーポメロは自家用の果物」「サワーポメロは高く売れるはずがない」と思い込んでいるせいではないかと思う。つまりサワーポメロに将来性を感じていない。柑橘のように「一度植えたら簡単に植え替えはできない」というような作物の場合、定植の際は最も有望そうな品種を選ぶのが当然である。その結果、生産量が少なくなって市場にあまり流通しないため、さらに有望に見えなくなる。そういう負のフィードバックの結果、サワーポメロは自家用に1、2本植える程度のご当地柑橘に甘んじているのではないだろうか。
だとすれば、サワーポメロの価値は過小評価されているということになる。もしかしたら、これを真面目に売ろうとすればそれなりに結果がでるのではないか?といっても、私自身はサワーポメロはやはり2本しか栽培していないし、これから増やしていこうという気もないが…(あ、やはり将来性を自分も感じていなかったのかもしれません(笑))。
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