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2016年1月22日金曜日

イケダパン跡地の有効利用

先日の記事で、加世田の市役所周辺に下水道を敷設することへの反対意見を書いた。

そのついでといってはなんだが、47億円で下水道を作るくらいならぜひやってほしいことがあるので書いておきたい。それは、イケダパン跡地の有効利用である。

イケダパンは、加世田発祥のパン屋である。加世田出身の人には今でもイケダパンのパンに思い入れがある人がいると思う。イケダパンは加世田の中心部(地頭所)に大きな工場があって、ここでパンを製造し出荷していた。今は商売上の都合(主に流通の効率だと思う)で重富に移転して、広大な工場跡地は廃墟化している。広さは、多分約2ha=20,000㎡くらい。

加世田の市街地が抱えている課題の一つは、中心部にこの廃墟を抱えていることである。この廃墟が、加世田市街地の発展を阻害している要因の一つだと思う。昼も雰囲気は悪いが夜になると更に不気味であり、小さな子どもがいる親などは不安に思っている部分もあるだろう。もちろん、こうした広大なスペースが中心部の一等地に存在しているというだけで損失である。

ところで最近、加世田中心部に「すき屋」と「西松屋」ができて私はビックリした。都会の人は「すき屋」とか「西松屋」みたいな面白味のないチェーン店が出来るのは街の衰退を表しているようにも思うかもしれないが実態は逆で、このような採算をシビアに考える企業が衰退しつつある(とみんな思っていた)街に進出してきたということは、加世田市街地の可能性を考える上で重要なことだと思う。

つまり、こういう企業が進出してくることの是非はさておいて、加世田中心部にはまだまだ発展の可能性があるということだ。適切な事業用地さえあれば。

もともと、加世田市街地の中心部は今「ゆめぴか通り」と呼ばれている本町商店街の方にあった。南薩鉄道の駅の目の前だったからである。今でもここに鹿児島銀行があるし(※鹿児島銀行は鹿児島では街の一番中心部にあります)、かつては太平デパートという百貨店もあった(※南薩で鹿児島市の「山形屋」のような位置を占めていた百貨店)。

それが鉄道の廃止により人の流れが変わり、商業の重点が県道沿いへと移ってきた。太平デパートも移転して県道沿いに「ピコ」という店舗を構えた。駅の周りがさびれて、県道・国道やそのバイパス沿いに店舗が出来ていくというのはどこの地方都市でも起こっている遷移だろう。加世田の場合、南薩鉄道の廃止も随分前のことだし、その遷移は終了し、これから県道沿いの店舗もさびれていく運命なのだろうかと思っていたのだが、どうもそうではなかったらしい。それなりに購買力のある消費者を抱えた、まだまだ商売の可能性がある街なのかもしれない。これから笠沙、大浦、坊津あたりの若者世代がどんどん加世田へ移住していくからだ(これは僻地在住者としては少し悲しいですが)。

そこで、問題はイケダパン跡地へと戻ってくる。街の中心部にある広大な商業用地が、使われないまま塩漬けにされているというのはとてももったいない。ここの土地が使えるようになったら、新たな企業が進出したり、地元企業が店舗を構えたりするといったことが起こるのではないか? いや、きっとそうに違いないと思う。「すき屋」や「西松屋」が進出してきたくらいだから。

では、なぜイケダパンはここの土地を売らないんだろうか。固定資産税も払い続けなければならないというのに。

答えは多分簡単で、「ここを買いたいという企業がないから」だろう。なにしろかなり広大である。ここをまとめて買い上げて、再開発していこうという野心的なデベロッパーはそうはいないと思う。そこまでの収益性が見込めないからだ。工場を解体して更地にし、細切れにして販売することは出来るだろうが、工場を解体した段階で固定資産税が上がるので(たぶん)、よほど楽観的な土地売却の見込みがないかぎりイケダパンはそれはしないだろう。

だからここの土地を動かそうとしたら、買い手は市役所以外に考えられない

すなわち、市役所がイケダパンの跡地を買い取って、事業用地として分譲するのがもっとも合理的な廃墟の解消方法だと思う。イケダパンにすれば一種の不良資産であるので、激安でなければ手放したいはずである。加世田中心市街地の再開発事業は、地元業者の活躍の余地があり(何しろ事業の中心は廃屋の解体と基盤整備だろう)、下水道敷設よりも地元が受ける恩恵は大きい。

もちろん、ただ土地を分割して販売するだけでなく、いろいろなことが考えられる。例えば、現在の土地を2つに分割して半分を公園にし、市民の憩いの場にすることも一案である。

都市の中心には公共のスペースが必要で、ニューヨークにセントラル・パークがあるごとく、東京の中心に皇居があるごとく、見ず知らずの他人同士が同胞として集う、しかも消費行動から距離を置いた場所は都市にとって絶対不可欠だと私は思う。公園は子どもや老人のためだけのものではなく、共同体をつくっていくために必要な「場」なのである。

今の南さつま市にはそういう場所がない。敢えて言えば市役所の市民会館とか「ふれあい加世田」であるが、こうした場所は「用事がないと行かない(行けない)場所」である点で真の「公共のスペース」ではない。暇な時にふらっと散歩してベンチで読書し、見ず知らずの人と立ち話するような場所があるべきなのだ。

こうした土地は一見無駄であるが、人々の創造性を刺激したり、人と人の思わぬ結びつきをもたらしたり、様々な人が目に見える場所に出る機会を得る(※例えば、障害を持っている人を普段街中ではあまり見ないが、そういう人が共同体の一員として存在できる場所になると言う意味。最近の言葉でいうと「ソーシャル・インクルージョンの場としての公共空間」)といった面で、都市が真に都市的になるための重要な機能を担っているのである。

ついでに、そうした公園に「イケダパン発祥の地」の石碑をつくってあげればイケダパンも喜ぶと思うし、イケダパンの郷土愛に訴えるものがあるに違いない。

というわけで、47億円かけて市役所周辺に下水道をつくるよりは、イケダパン跡地を市役所が購入し、公園を造成したり事業用地を分譲したりするという再開発事業をする方が、南さつま市の発展に繋がると思うのですがみなさんはどう思いますか?

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