先日の土日、加世田ではプレミアム付の商品券が発売された。土曜日は4〜5時間も並んだそうだ。日曜日、私も販売会場の南さつま市民会館を偶然通りかかったが、すごい人出で何事かと思った。
正式名称「地域活性化すまいるアップ・プレミアム付商品券」は、1万円で1万2000円分の商品券が買えるもので、ある意味では2000円をタダで配っているのと同じことだからそこに人が殺到するのは当然である。政府が主導してやっているものだから、全国の多くの自治体で同様な現象が生じたのではないだろうか。
さて、私が気になっているのは、実は南さつま市には2種類のプレミアム付商品券があるということである。私も実際に商品券が発行されるまでそれに気づいていなかった。
なぜ南さつま市に2種類の商品券があるのかというと、商品券は自治体が直接発行するものではなく商工会や商工会議所が発行しているためで、南さつま市には「南さつま市商工会」と「南さつま商工会議所」が並立しているからなのだ。
どうして2つの似たような団体が並立しているのかというと、合併の経緯による。元々どちらの組織も根拠法に基づき、商工会は町村区に、商工会議所は市区に設立されるものであり、本市の場合も旧大浦町、笠沙町、坊津町、金峰町にはそれぞれの商工会が、そして旧加世田市には加世田商工会議所があった。それが南さつま市への合併によっても一つに統合されることなく、それぞれ旧町同士がまとまった「南さつま市商工会」と旧加世田市のみを区域とする「南さつま商工会議所」ができたというわけである。
本来は、南さつま市になったことを契機として全てが「南さつま商工会議所」にまとまるべきだったと思う。当市のような弱小自治体に同様の組織が並立していることは負担でもあり、効率も悪く、スケールメリットも発揮できない。しかしながら商工会と商工会議所は、ほぼ同様の活動をする組織であるにもかかわらず、全く別系統の存在となっているため合併が難しい。
例えば、商工会の所管は中小企業庁であり、商工会議所の所管は経産省であって所管からして違っている。また商工会は県単位組織として鹿児島県商工会連合会、全国組織として全国商工会連合会という縦の組織が存在している。一方で商工会議所は、県単には鹿児島商工会議所、全国組織は日本商工会議所、となっている。このようにそれぞれが別系統のヒエラルキーで活動をやってきた。その中身がほとんど同じものだったとしても歴史的経緯から別別になっているわけで、これが合併するのは困難である。
平成の合併の議論の中でも、商工会側から「商工会を商工会議所に無理に合併するのはやめてくれ」という声が上がったようである。実際には、行政の合併と同時にこうした事業者組織も合併する方が長い目で見れば加盟者の利益になったと思うが、結局は今まであった組織を潰したくない、ということや政治的な事情(全国商工会連合会と日本商工会議所は別に政治活動を行っているから)が優先されたような気がする。それに商工会や商工会議所が目立って意欲的な活動をしているというケースも(残念ながら)少ないと思うので、合併せずに併存していてもそれほどの差し障りはないと判断されたのだと思う。
しかし実際にこうして2つの商品券(のチラシ)を眺めて見ると、南さつま市に2種類の同様の組織があることがとても奇異に感じられる。このプレミアム付商品券の発行が、「南さつま市制施行10周年記念事業」に位置づけられていることもちょっとした皮肉ではないか。商工会と商工会議所が一つにならずに併存していることの象徴、つまり4つの旧町と加世田の断絶を象徴するような商品券なのに(併存していること自体は市の責任ではないが)。「商工会」の商品券は4つの旧町でしか使えないし、「商工会議所」の商品券は加世田でしか使えないのだ。
とはいっても、商工会と商工会議所が一つになるには、実際には合併ではなく商工会が解散して商工会議所に再編されるという手続きが必要で(たぶん)、これまであったものをなくす、という関係者にとっては誠に暗鬱な決断が必要になる。こうした暗鬱な決断を容易にし、小異を捨てて大同に就くための後押しが平成の大合併のアフターケアとして求められていると思う。
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