以前ブログ記事で紹介した村田旅館。改装されたと聞いていたが、どうなっているのかずっと気になっていた。
【参考】ホンモノレトロな村田旅館が素晴らしい
改装で素晴らしい部分がなくなってしまって、機能的でオシャレだがどこにでもある施設になってしまわないかと心配していたのである。というわけで、先日、用事で村田旅館を訪れた折り、少しだけ改装箇所を確認してきた。
一番心配していたのは、冒頭写真の洗面所のタイルである。ここが残っていて本当によかった!
昔の手洗い場のタイルはこういうデザインが多かったが、今では全く絶えてしまった様式である。我が家も改装前、お風呂の手洗い場(お風呂の中に手洗い場があったのです)はこれ式のタイルだった。丸っこい小石みたいなのが敷き詰められた感じのこのタイル(と呼んでいいのか)、本当に好きだ。5分くらい眺めていても飽きない。
それから、メインの洗面所の流し台のタイルも残っていてなにより。
ここの流し台のデザインはとても瀟洒で、あか抜けている。昔はこういうデザインの流し台が流行ったんだろうか。寡聞にして知らない。質感もとてもよく、キレイに掃除するのが生きがいにでもなりそうな、そういう流し台である。
ちなみに、細かいことだがここの電灯のスイッチが昭和なやつなのもよかった。本当は、電灯がもっと薄暗かったらなお雰囲気が出ると思う(当日、ちゃんとしたカメラを持っていなかったので写真がイマイチですいません)。
私が水回りばかり気にしているのは、立派な梁とか階段の手すりのような構造・意匠はどこでも残りやすいのだが、水回りは真っ先に改装される部分であるためなかなかホンモノのレトロが残らないためである。水回りを昔ながらに残していくためには、丁寧なメンテナンスが求められる。つまり村田旅館の洗面所のタイルがちゃんと残っているのは、維持管理の丁寧さの現れだと思う。
といっても、女性にとっては「やっぱウォシュレットがあった方が…」とか「薄暗い洗面所だと化粧がしにくい」といった事情はあるだろう。
そういう声を考慮してか、村田旅館でもトイレはそれなりに改装されており(でもやっぱりタイルはそのままだった。立派)、特に手洗いの流しが変わっていたようだ(男性用だけしか見ていないので女性用はどのようになっているかわかりません)。
そして安心したのは、その前の鏡! 昔からある広告入りの鏡がちゃんとそこにあるではないか。「御菓子の小田屋」(地元の老舗和菓子店)の広告が入った鏡である。前も書いたが私はこういう広告入り鏡が好きで、改装後も見たところ広告入り鏡がほぼそのままになっていたのには安堵した(ただし、場所が変わっていたものがありました)。
ちなみに、なぜ昔の鏡には広告が入っていたのかというと、昔は鏡がかなりの高級品であったために、おいそれと鏡を購入するということができず、スポンサーを募って鏡を買っていたのの名残のようである(推測)。この「御菓子の小田屋」の鏡が設置された頃は既に鏡は高級品というほどでもなかったと思うが、鏡に広告を入れる文化がまだ残っていたのだろう。この頃(おそらく昭和50年代?)までは、店舗の新築・改装などの時に御祝いの品として鏡を送るという文化もあったように思われる。
なお、お風呂がどうなっているのかが気になるところだが、宿泊で行ったわけではないのでさすがに見に行くのが憚られ確認していない。ただし、かなり工事をしてキレイになったらしいということは聞いた。
改装は、全体として壁紙の張り替えや建具の入れ替えなど内装関係が中心で、構造的な部分にはほとんど手をつけていないようだ。入り口すぐにある2階への急な階段(この階段がまたすごくいい感じ)などもそのままになっており、これもよかったところである。
逆に言うと、各所の段差などもそのままであるため、バリアフリー対応の面では遅れていると言わざるを得ないが、バリアフリーだがつまらない旅館より、バリアフリーでなくても味のある旅館に泊まりたいという人はたくさんいるのだから、今後も無理にこの建築物の構造を変える必要はないと思う(※)。
客室の中はほとんど見ていないが、今回の改装は、改めるべきを改め、守るべきは守ったような気がしている。欲を言えばあまりキレイにならないようにしたらもっとよかったと思うが、ちょっと使い古された感がある方がよいというのは私の偏った好みで、普通はキレイな方が好まれるわけだから、お客さんの目線に立った改装だと思う。
ところで、今回は宴会利用で村田旅館を訪れたのだが、宴会料理も処理が丁寧で全て美味しくいただいた。宴会料理は大量に作るのでどうしても手抜きになりがちだが、ここはレトロ関係なく料理が本当に美味しい。たくさん余ったので包んでもらい、家でも美味しくいただいた。
というわけで、ホンモノレトロな村田旅館は健在である!
※バリアフリー法によって、旅館はバリアフリーに努めないといけないとされているが、あくまで努力義務である。
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