それで、2012年が「かごしまブランド」に指定されてから20年ということで記念大会が開催されており、その冊子を貸してもらって見てみた。その冊子にはこれまでの歩みということで試作が始まった1976年からの主な出来事がまとめられており、大変参考になった。
その歴史を簡単に述べると、「栽培が始まった頃は天候にも恵まれ豊作が続き順調に生産量が拡大したが、次第に天候不良や疫病の発生に見舞われるようになり、近年では不作が常態化するようになった」とまとめられる。
ちょっと趣味的になるが、その様子を下のような表に整理してみた。「主な出来事」の欄を眺めているだけでもなんとなく風向きが悪くなってきている様子が感じられるが、よりわかりやすいのは「生産性」の欄である。
「生産性」は、便宜的に出荷量を作付面積で割ったものである。これは正確な単位面積当たりの収穫量とは異なる。なぜなら、作付面積も出荷量も、本来は春作と秋作それぞれの計算が必要だからである。しかし便宜的な合算でも、その年の雰囲気を摑むことはできるだろう。
そして「生産性」の欄には、これまた便宜的に、〜15:赤色、15〜20:黄色、20〜:水色、と色をつけてみた。年を経るにつれて赤色が多くなっていることが一目瞭然である。というか最近は赤色しかない。
「加世田のかぼちゃ」のあゆみ
年 | 主な出来事 | 作付面積(ha) | 出荷量(t) | 生産性 |
1976年 | 春かぼちゃ試作 | |||
1977年 | 春かぼちゃ本格的栽培開始 秋かぼちゃ試作 |
3 | 75 | 25.0 |
1978年 | 秋かぼちゃ本格的栽培開始 | 9 | 153 | 17.0 |
1979年 | 台風による被害 | 14 | 184 | 13.1 |
1980年 | 30 | 487 | 16.2 | |
1981年 | 50 | 1160 | 23.2 | |
1982年 | 晩霜による大被害 | 84 | 1820 | 21.7 |
1983年 | 台風による被害、疫病大発生 | 88.8 | 1195 | 13.5 |
1984年 | 100.8 | 2220 | 22.0 | |
1985年 | 92.5 | 2110 | 22.8 | |
1986年 | 95.1 | 2300 | 24.2 | |
1987年 | 103 | 2212 | 21.5 | |
1988年 | 124.5 | 2498 | 20.1 | |
1989年 | 安定生産 | 111.5 | 2277 | 20.4 |
1990年 | 台風による被害 | 107 | 1988 | 18.6 |
1991年 | かごしまブランド産地指定 秋かぼちゃ台風被害により収穫皆無 |
116 | 1747 | 15.1 |
1992年 | 朝日農業賞受賞 | 93 | 2298 | 24.7 |
1993年 | 晩霜による被害 記録的長雨による2番果着果不良 MBC賞受賞 |
107.7 | 1915 | 17.8 |
1994年 | 春先の低温、日照不足で生育遅れ 輸入かぼちゃとの競合で価格低迷 |
105.3 | 2106 | 20.0 |
1995年 | 92.1 | 1564 | 17.0 | |
1996年 | かぼちゃサミットを開催 | 95.1 | 1818 | 19.1 |
1997年 | 天候不良による減収 | 104.2 | 1669 | 16.0 |
1998年 | 春かぼちゃ、天候不良による減収 | 102.2 | 1505 | 14.7 |
1999年 | 天候不良、台風による減収 | 79.1 | 1222 | 15.4 |
2000年 | 春かぼちゃ疫病が大発生 | 73.3 | 1092 | 14.9 |
2001年 | 単価安 産地指定10周年記念大会開催 |
70.8 | 1194 | 16.9 |
2002年 | 天候不良や疫病による減収 | 67.6 | 1097 | 16.2 |
2003年 | 天候不良や疫病による減収 | 75.2 | 1295 | 17.2 |
2004年 | 台風被害による大幅な減収 | 76.7 | 918 | 12.0 |
2005年 | 台風被害による大幅な減収 | 70.5 | 1068 | 15.1 |
2006年 | 春かぼちゃ天候不良による品質低下 秋かぼちゃ豊作 |
68.7 | 946 | 13.8 |
2007年 | 天候不良による減収 | 71.2 | 1025 | 14.4 |
2008年 | 天候不良による減収 | 70.6 | 795 | 11.3 |
2009年 | 天候不良による減収 | 72.5 | 964 | 13.3 |
2010年 | 天候不良や疫病による減収 | 74.7 | 801 | 10.7 |
2011年 | 天候不良による減収 | 72.9 | 724 | 9.9 |
このように見てみると「加世田のかぼちゃ」が次第に衰微しつつある様が見て取れ、生産者として薄ら寒い気持ちになるのだが、本当に危機感を抱くべきなのは不作が続いていることよりもむしろ、近年の「産地としての動きのなさ」かもしれない。
というのは、順調な栽培が続いた”青色の時代”を経て「かごしまブランド」の産地指定を受け、その後”黄色の時代”にも「朝日農業賞」「MBC賞」を受賞したり「かぼちゃサミット」を開催したりといった動きがあった。もしかしたら積極的に行ったものではないのかもしれないが、結果的にブランドの認知を挙げ、産地が一丸となる方向ができたのではないかと思う。
しかし、それに続く”赤色の時代“には、そういった動きが全くない。おそらく、天候不良に苦しんで思うように結果が出ないため萎縮し、積極的な手を打つことができなかったのだろう。 天候不良というのは如何ともしがたいので、生産量の低迷などはしょうがない。だがだからこそ、産地として埋没しないようにする努力をしなければジリ貧になっていくのではないだろうか。
私は「加世田かぼちゃ」の歴史を振り返るにあたり、「なんだかんだ言っても20年以上の積み重ねがあるわけだから、それなりにいろんな取り組みがあったのでは?」と思っていた。が、これまでの所、取り組みは栽培技術の面に限られているように見える。
栽培技術の進歩は重要だが、ブランドだってただ自称しているだけではその真価は発揮されない。実直に生産するだけでなくて、産地として前向きに動く姿勢を見せ、新たな市場を開拓していくきっかけづくりをしていく努力が必要だと思う。微力ながら、私も一生産者としてそれに取り組んでいきたい。
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