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2014年11月30日日曜日

農産物直売所の視察へ行って

先日、農産物直売所(物産館)の視察研修に行った。

地元の物産館「大浦ふるさとくじら館」を盛り上げるために、その出荷登録者会の研修として見聞を広めに行ったわけだ。

巡ったのは、鹿児島市吉野の「ごしょらん」、吉田の「輝楽里(きらり)よしだ館」、郡山の「八重の里」である。それぞれがどんなところだったかということはさておいて、これらを見た上で物産館の運営について思ったことを備忘のためにまとめておきたい。

その1:出荷者と店とのコミュニケーションは重要。物産館と普通の八百屋さんとの一番の違いは何かというと、仕入れるものを店側が選べない、ということである。物産館は委託販売なので、基本的に出荷者が持ってくるものがそのまま並んでいる。それだけでは足りなくて、店側が仕入れ品を置くこともあるが、それはあくまで例外的な対応である。

フリーマーケットなども含め少しでも小売の経験がある人は、何をどれくらい仕入れるかがいかに売り上げを左右するかを知っていると思う。だが物産館というのは、小売業では非常に大切な「仕入れ」の部分に自由がきかない。特に農産物の場合、収穫時は地域で大体一緒なのでモノがある時期は大量に存在し、ない時期は全然ない、ということが起こりうる。

ではそれをどうやって克服するかというと、出荷者と店とのコミュニケーションしかない。出荷時期をそれぞれの生産者でずらしてもらう、という対応が理想だがそうでないとしても、作付面積の把握をしてそれを一覧表にするだけで各生産者がいろいろと考えるだろうし、ただ「春のキャベツが毎年不足気味なんですよ〜」とか言ってもらうだけで生産者のモチベーションが変わってくると思う。

その2:店としての統一感は重要。物産館というのは多様性がある場所である。いろんな出荷者がめいめいに農産物を持ってくるわけだから、大根一つとってもいろんなものが存在しうる。それが八百屋さんと違うところであり、いいところでもある。だが一方で、それは陳列された商品に散漫さをももたらす。その「散漫さ」を排除してしまったら物産館のいいところが減ってしまうので、散漫なのは仕方がない。

でもやはり、店として統一感はあった方がいい。それは「うちはこんな店でありたい」という基本路線の表明だと思う。例えば、「かぼちゃ」とか「大根」とかのプレートの文字(フォント)一つとってもその表明の一部だ。POPなんかを生産者が自由に置いてよいというのはいいと思うが、ただでさえ物産館はバラバラの生産者が自由に商品を置いているわけだから、なんでもござれではなくて店としての雰囲気作りが重要だと思った。

その3:運営に十分なスペースを確保するのが必要。各地の物産館を見てみても、建物に不具合があることが多いように感じる。不必要に立派な吹き抜けとか、モニュメンタルな(記憶に残るような)正面の構えとか、そういうことに予算が使われていて、あまり運営のことを考えずに設計されたような建物が散見される。小売業のことをあまり知らない人が企画・設計しているのかもしれない。

特に、裏方となる管理スペースが狭すぎることが多い。私の感覚だと、売り場面積の1/3くらいの広さの管理スペース(事務所、倉庫、作業場など)は必須だと思うが、なかなかそういうスペースが準備されていない。このために、お客さんからすると少しみっともない部分までが表に出てきてしまっている状況があるのではないか。

我が「大浦ふるさとくじら館」も、店舗の動線が悪いとか、出荷者が農産物を持ち込んだりバーコードを張るスペースがないとか、いろいろ設計上の問題を抱えている。どこの物産館も似たようなものだ、と達観することなく、運営に必要なスペースを確保したり、設備の問題を解決したりする努力は続けて行かなければならないと感じた。

その4:「大浦ふるさとくじら館」にもいいところがある。これまでも「くじら館」について取り上げたことがあるが、あまりいいことを書いていなかった気がする。だが、他の物産館を見てみると「くじら館」の可能性も捨てたものではないと思う。一番可能性を感じるのは周辺に気持ちのよい芝生スペースがあることで、ここを利用して小規模なイベントをしたら随分面白いことができそうだ。普段の出荷者の枠を超えたフリーマーケットとかやってみたらどうか。

また、裏手に観光農園(あまり利用されていない)があるのも面白い。正直この立地で観光農園は厳しいし、土質があまりよくないと言われているが、しっかりとした管理者がいたら物産館と相乗効果を生む企画ができそうだ。

あと、そもそも「南さつま海道八景(景色がすばらしい国道226号線のエリア)」の入り口に立地しているというのも重要だ。今「くじら館」には観光案内所的な機能はほとんどないが、この立地を活かして観光と絡めた企画ができれば、(収益は別にして)観光客に喜ばれることになるだろう。例えば、「ふるさとくじら館」のFacebookページを立ち上げて観光客からの投稿写真を募り、写真をその場で投稿してくれた人にはオマケをあげるとかできたら面白い。そこまでしなくても、せめて観光パンフ類をきれいに陳列しておけばそれなりに利用されると思う。

ただ、ここで述べたこと全てについて言えることだが、積極的な企画を打っていくためにはそれなりのリーダーが必要である。今の「ふるさとくじら館」には店長が不在であり、何をするにしてもその点がネックになる。でも店長がいないから何もできない、と諦めていたら何も進まない。

私も、これまで物産館にはあまり農産物を出していなかったが、来年からは物産館用として少し野菜を作ってみたい。もちろん「南薩の田舎暮らし」の加工品ももう少し出荷を増やしていく(はず)。出荷者の立場から、何らかの貢献ができたらと思っている。

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