講師は伝統農法文化研究所 代表の木嶋利男さん。元は栃木県の農業試験場にいらっしゃった方。木嶋さんの主張は次のようにまとめられる。
- 植物は、連作した方が生産性があがる。
- 連作すると連作障害が出ることも確かだが、1年(か2年)我慢すれば連絡障害は出なくなり、病害虫も発現しなくなる(発病衰退現象)。
- とはいえ、それは経営的に厳しいので、2、3年はコンパニオンプランツなどを使って、土壌消毒せずに頑張ってみるとよい。
農業の基礎的教科書には「連作によって土壌の生物相が偏り、病害虫が出やすくなる」「連作を避けて、効率的な輪作を行うのがよい」なとど書いているのが普通である。
しかし、例えばジャガイモを育ててみると、収穫後、土がいかにも「ジャガイモっぽい土」に変わっていることに気づく。どこがどのようにジャガイモっぽいかはうまく説明できないが、「いかにもジャガイモが育ってそうな土」に変わっているのである。植物は動けないために、土壌自体を自らに好適なものに徐々に変化させていく力がある。
だから、そこにまたジャガイモを植えたらよさそうだ、というのは誰でも思うだろう。ただここからがポイントで、木嶋さんがいう「連作」は、「続けて同じ作物を作り続けること」ではない。「同じ時期(季節)に、同じ場所で、同じ作物をつくる」のが連作で、そうでなければ輪作になる。要は、続けてジャガイモを植え付けても連作にはならない(まあ、春作と秋作では品種も自ずから異なるが)。季節が違えば土壌の条件が異なるからだそうだ。
ジャガイモの連作というと、次の年の同じ時期にジャガイモを植えることなのである。そして、その間、後作に何をつくっても連作は連作になる。同じ作物をひたすら作り続けるのが連作ではないのである。つまり連作というのは、同じ条件の下に作物を作り続けていくことだ。そういう意味では、「連作のすすめ」といっても、普通非常に重要とされている作物のローテーションを否定しているわけではない。
そのように連作を続けていても、当然ながら連作障害が出る。連作障害というのは、連作によって土壌の生物相が偏り、病害虫などが頻発する状態をいう。これはかなり昔から「いや地」などと呼ばれて忌まれていたから、化学肥料や農薬のせいではない。この連作障害があるから、普通は連作は避けるべきとされているのである。
私がつくっているかぼちゃも、同じ場所でつくっているとネコブセンチュウとかネグサレセンチュウとかいう害を及ぼす連中が増えて、うまく生育しないかぼちゃが多くなる。そのため、真面目にやる農家(?)は、土壌消毒をするのだが、木嶋さんによると土壌消毒こそがよくないという。
土壌消毒をすると直後はいいが、結局はまたセンチュウ類が増えてきて、また土壌消毒が必要になる。だが、連作障害を耐えて(というのは、収量が激減するのに経営的に耐えて、という意味)その次の年も何の対策もせずにまたかぼちゃを植えれば、次の年には連作障害は全く出なくなるという。一度土壌の生物相が偏って閾値を超えると、今度は土壌の多様性を回復させる方に力が働き、健全な土壌に戻るのだという。簡単に言うと、センチュウの天敵となる糸状菌(カビ)などが増えるからセンチュウ被害は出なくなる、ということだ。
だが、こうした天敵はセンチュウがある程度いないと増えないので、一度センチュウが出たらセンチュウを増やすくらいの気持ちでやらないといけないらしい。連作障害を恐れて土壌消毒したり、センチュウを減らす緑肥を植えたりするのは逆効果だ、と断言していた。正直いうと、私自身、今年は春かぼちゃの後作に、センチュウを減らす効果があるとされているクロラタリアという緑肥を育てていたので、ガッカリしたところである。
また、病気の対策も似たようなもので、普通、植物に病気が出たらそれ以上広がらないように罹患した植物を取り除き、圃場から持ち出すこととされているが、木嶋さんによるとそれも逆効果だそうだ。罹患したら、その植物を切り刻み、圃場に埋めるのがよいという。そうすると、病原菌が土壌で増えて、同時にそれに対抗するものも増えるから、次の年には病気がでなくなるということだ。
話が少し逸れるが、農業というのは勉強しているとこういうのがすごく多い。Aと言われているけど実はBだ、とか、Aがよいといわれているけど実はAはダメだ、とか、正反対のことがよく言われる。それだけ未熟な産業で、本当は何がいいのかよくわかっていないということなのだが、少なく見積もっても5000年くらい歴史があるのに、こんなにあやふやなことが多いことというのも他にないと思う。
ともかく、連作を続けると生産性が上がる現象は木嶋さんが言っているだけでなくていろいろな人が観察・研究しており、それ自体は信頼できそうである。問題は、一度は連作障害で壊滅的な被害を受けないと次のステージに進めない、というスパルタな展開である。これを軽減するため、木嶋さんはコンパニオン・プランツ(共栄作物)などの伝統的な知恵を使って乗り切るべしとしているが、これの効果は植物によって様々だし、決定的な組み合わせが全ての作物にあるわけではない。
たとえば、ウリ科にはネギの混植がよいとされているが、かぼちゃは葉っぱが大きすぎてネギの受ける光をかなり減らしてしまい、あまり効果がないという。とすると、連作方式でかぼちゃをつくる場合はどうしても潰滅に耐える必要があるということなのか…? そのあたりが「連作のすすめ」の弱点ではあるが、連作の重要性を認識させてもらったので、今後活かしていきたい。
すみません
返信削除連作についての説明が意味不明です
一般的に言われている「連作」と同じなのかどうかは知りませんが、この木嶋さんが定義されている「連作」は、上に書いた通り「同じ時期(季節)に、同じ場所で、同じ作物をつくる」ということです。
削除よって、例えば春にジャガイモを作り、同じ場所で秋にジャガイモを作ったとしてもそれはここでいう「連作」になりません。春にジャガイモを作り、秋にはかぼちゃを作って、また次の年の春にジャガイモを作ると「連作」になります。わかりにくい話ですが、木嶋さんの言っている「連作」はそういうことです。
ご関心があれば、木嶋さんの本を直接読んだ方が早いと思います。
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