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2014年6月12日木曜日

南薩鉄道の廃線跡

鉄道ファンにも「撮り鉄」とか「乗り鉄」とかいろいろあるが、世の中には「廃鉄」とでもいうべき人達がいる。つまり、廃線跡を歩くことを無上の喜びとしている鉄道ファンのことだ。

もとより廃線路であるから、路線図を入手するのも大変だ。地図上で大まかな位置はわかっても、路線は撤去され、藪に埋もれ、跡形もなくなっている場合もある。だから地元の人に「ここに駅がありませんでしたか?」と訊きながら廃線跡らしきものを歩き、往時の姿を想像し、僅かな痕跡を見つけて喜ぶのである。

そういう人達のバイブル的存在(だと思います)が宮脇俊三さん編著の『鉄道廃線跡を歩く』というシリーズなのであるが、この3冊目の巻頭特集で南薩鉄道が大きく取り上げられている(絶版)。表紙も、吹上の(南薩鉄道の)永吉橋の橋脚の写真だ。これは南薩鉄道の廃線跡の中でも見所の一つで、立派な4つの橋脚が佇む様子は寂寥としていて、遺跡のような悲しさがある。

ちなみに、このシリーズは「廃鉄」たちのルポ(?)をまとめたものだが、南薩鉄道に関しては宮脇さん自身の紀行文である。鉄道紀行の素晴らしい書き手である宮脇俊三さんが、どうして南薩鉄道を取り上げたのか、そのあたりのことは何も書いていないが、この鉄道に何らかの魅力を感じていたのだろう。

今年は、南薩鉄道開業100年、廃止30年ということで、南さつま市では7月に企画展が開催される予定である。私は、年齢的にも南薩鉄道を知らず、また移住組であるから直接の思い出があるわけではない。しかし滅んだものは好きなたちであるから、廃線跡というのを興味深く思っていたところであるし、楽しみにしている。

ところで、南薩鉄道の廃線跡はサイクリングロードとして整備されている区間も多いので、廃線跡は決して過去の遺物というだけではない。南さつま市は旧加世田市から引き継いだ「自転車の街」も売りにしているわけだが、これは廃線跡をサイクリングロードにしてそれを目玉にしよう、という政策による部分が大きい。廃線跡を共有する日置市との連携もあまりないようであるし、この政策は未だ十分に達成されていないように思うが、廃線跡の活用について、この企画展をきっかけにしてもう一度考えてみるのもいいかもしれない。

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