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2014年1月8日水曜日

無農薬・無化学肥料のポンカン栽培1年目は大失敗

一昨年、先輩農家Sさんから引き継いで管理し始めたポンカン園が、今年の収穫期を迎えた。

ちょうど1年前のブログ記事で、「次年度は有機栽培にトライしたい」としていた園であり、実際に昨年1年間有機的管理を行った。つまり、無農薬・無化学肥料でやってみたわけだ。

結果は、ある程度覚悟はしていたとはいえ、思った以上に惨憺たるものでガックリきているところである。なにしろ、果実の多くがサビダニの被害を受けてしまい収穫量が計画の1/5程度しかない上、年末からの落果がひどい。さらには、残りの見た目のよい果実も、さほど味が乗っていない。

よく有機農家の成功物語で「最初の頃は全部ダメになった」みたいな苦労自慢があるが、まさにそれを地で行ってしまった。農薬や化学肥料を使って農協の基準通り作るのであれば、自分の栽培技術が未熟であってもある程度のものは出来る。だが、有機栽培ではそうした基準を逸脱して作るわけだから、自分の技術の程度が露骨に出てしまう。この惨憺たる結果は、今の私の栽培技術の未熟さの現れだと謙虚に受け止めるしかない。

ではどうしてこのような結果になってしまったのか、ということだが、主因としては(1)夏の剪定が不十分だった、(2)施肥が過剰だった、ということの2点が考えられる。剪定が不十分でサビダニが発生し、施肥が過剰なために味が乗らなかったのだろう。

(1)については、剪定不足で風通しが悪いとサビダニが大量発生すると言われていたが、今回それを実感した次第である。このサビダニというものの被害を受けると、果実の見た目が悪いだけでなく中身の味まで悪くなってしまい、商品価値が0になる。特に去年は夏の天候がよすぎてサビダニの生育に好適となり、普通に農薬を掛けているところでもかなり発生している園が多かったようだ。

ところで近年ここらではサビダニの被害がひどくなってきているという。以前はさほどサビダニを気にする必要もなかったそうだが、この5年10年で随分被害が大きくなってきたと聞いた。調べてみると近年被害をもたらしているのはリュウキュウミカンサビダニというこれまでいなかった害虫であり、こいつらが強力らしい。日本では1991年になって沖縄で発見され(世界的には1978年にエジプトで見つかったのが最初)、鹿児島では1993年に見つかった害虫ということで、現在その拡散が懸念されている。

有機農業であってもサビダニに使える農薬はあるが、結局農薬というのは圃場生態系を不自然に攪乱するものなので、自分としては農薬は使わずにサビダニを抑制したいと思っている。周りの圃場に迷惑がかかってしまうとよくないが、近くで有機カンキツを作っている農家は農薬ゼロでこのサビダニを抑えているので、私にもできる筈である。

(2)については、化学肥料の場合はチッソ、リンサン、カリの含有量が表示されているので施肥計算ができるが、有機肥料の場合は大体の計算しかできないし、そもそも肥料成分の含有量が化学肥料に比べて少ないということで多めにやってしまったのが原因だ。

だが実際には、有機肥料だから多めにやらなくてはならない、ということは全くなさそうだ。というか、有機肥料というものは、肥料分を植物に供給するというよりも、土壌を豊かにするために与えるものだから、肥料成分の絶対量よりもそのバランスが重要であり、大量に与える必要はないのである。むしろ、肥料成分は若干足りないくらいの方が植物も強壮になるので、「足りなそうなら与える」くらいの心の余裕を持って施肥すべきだった。土壌改良は時間がかかるものなので、1度2度の施肥で目に見える成果を期待する方が間違いである。

というわけで、まだまだ有機農業はよく分からない部分もあるが、1年間取り組んでみてとても勉強になり、ポンカン栽培の要諦がだんだん見えてきた気もする。結果は惨憺たるものであったが、課題も明確になり、次年度へ繋がるものであった。

だが収穫量が劇的に少なかったことで、収入が打撃を受けただけでなく、昨年のお客さんで「来年も買うよ!」と言ってくれたところに応えられないのが辛いところである。正直、「南薩の田舎暮らし」で販売する量がないかもしれない(予約していた知り合いに売るだけで終わるかも…)。期待していた皆様、大変申し訳ありません。

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