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2026年9月9日水曜日

鹿児島の県立高校では、せっかくあるエアコンが十分に使えない状態


どうして鹿児島県は学校の空調に冷淡なのだろう。

令和8年熊本地震では、避難所となっている小中学校の体育館に空調(冷房)がないことが指摘された。しかし鹿児島の状況はもっとひどい。文部科学省の発表によれば、鹿児島県内の公立小中学校の体育館の空調の設置率は、全国ワースト2位の1.3%で全国の設置率31.7%を大きく下回った。ちなみに熊本は20.9%で九州ではマシな方だ(ちなみに全国ワーストは佐賀県。九州どうした)。

【参考】公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/mext_01278.html

しかしそれでも、教室の冷房はこの20年で設置が進み、鹿児島県でも小中学校の普通教室はほぼ100%空調が整備された。扇風機も含め空調設備が一切なかった私の少年時代の学校とは隔世の感がある。それだけ夏が暑くなったということか。

一方、公立高校の空調には別の問題がある。高校の空調は、小中学校にはまだ全然エアコンが設置されていなかった1990年代に整備されだしたと記憶する(薩摩半島のことで、大隅では違ったかもしれない)。当時、桜島の活動が活発で灰がよく降っていたので窓が開けられないことが多く、エアコン整備の機運が高まったのだと思う。しかし県立高校にはエアコンを設置する予算がないので、同窓会やPTAの予算でエアコンが設置された。もちろんその電気代は同窓会・PTA持ちだった。つまり、見るに見かねた同窓会・PTAがエアコンを設置し、維持管理してきた。そして驚くべきことに、この状況が30年も続いてきた。

2022年あたりからこのことが問題となり、特に蒲生高校など6校ではエアコン自体設置されていないということが明らかになって県議会でも取り上げられ、2025年度(令和7年度)からは普通教室の空調については県が予算措置することとなった(同窓会・PTA設置の空調機器も県に移管された)。ところが、これで問題が解決したわけではなく、むしろ新たな問題も生まれた。

第1の問題は、県が予算をつけたのが普通教室のみであるということ。物理・化学の実験室や美術室などの特別教室は対象外だ。第2の問題は、このために県が組んだ予算が鹿児島県全体でたった1億円だったということだ(令和7年度当初予算)。鹿児島県には68の県立高校がある。規模はいろいろだが単純計算すると1校あたり147万円しかない。

それでも、私立学校に通っている人からすれば「私立学校では利用者が全額負担しているわけだから、公立高校はまだ恵まれているんじゃない?」と思うかもしれない。しかし本質的な問題は、「県立高校の空調は控えめに運転されていて、冷房がついていても教室がかなり暑い」ということなのである。しかもこれが、県の予算措置によってよりひどくなっている気配すらある。県が予算をつけたのに逆にひどくなるのはどうしてかというと、制度の細かい仕組みが関係している。ちょっとややこしい話になるが説明しよう。

まずは電気料金の仕組みからだ。高校のような大口電力需要者は、家庭の電気とは契約が違う。家庭では、例えば50A(アンペア)で契約していたら50A以上の電気を使うとブレーカーが落ちて電気が遮断されるが、高校でこういうことがあると大変なので、高校にはそのためのブレーカーはない。では基本料金はどうなっているかというと、過去1年以内の最大需要電力(=一番大きい電力を使った時間の電力)に応じて決まる。ということは、たった1日でも最大需要電力をオーバーするとその月から1年間は基本料金が高くなってしまう。そして大口電力需要者では、従量制の電気料金が安い代わりに基本料金の占める部分が大きい。だから高校では暑い日もできるだけエアコン使用を抑制している。というより暑い日は自然と必要電力が大きくなるので、そういう時こそエアコンが抑制される。それでも、近年はどんどん暑くなっているので最大需要電力(=基本料金)はずっと更新され続けてきた。

これを補ってきたのが同窓会・PTAの予算だったのだが、その補填の仕組みも一筋縄ではいかない。令和7年度からは普通教室の空調は県費負担になったものの、特別教室の空調は依然として同窓会・PTA予算だ。ではこれをどう按分しているか。もちろん別に電力メーターがあるわけではなく電気の契約は一本なので、大まかにいえば次の計算式で按分されることになっている。

[(A)県費負担の電気料金] = [(B)電気料金全体] ー [(C)同窓会・PTAの設置機器の定格出力から計算される電気料金]

この計算構造は令和7年以前も同じで、違いは引かれる対象から普通教室の分が入るかどうかのようである。ともかく、「県費で足りない分を同窓会・PTAが補填している」のではなくて、「同窓会・PTAの負担分(C)は一定で、それ以外はどんなに増えても県費(A)」という構造であるということがポイントだ。先述のとおり基本料金は最大需要電力に応じて決まり、それが年々上がっているという事情があるにもかかわらず、基本料金の上昇分が(C)には十分に反映されない、という計算式なのである。

もちろん、これには同窓会・PTAの負担が大きくなり過ぎないようにという配慮がありそうで、それ自体はありがたい。だがここに落とし穴がある。県の予算では、電気料金が特別に予算措置されているのではなくて、各高校ごとに運営経費が一括計上されている。ということは、電気料金が増えると、自然とそれ以外の運営経費を圧迫することになる。例えば印刷とか水道料金に使えるお金が減ってしまう。エアコンをつけるとプールの水が入れ替えられなくなる、みたいな話だ。それでは困るので、高校としては冷房の使用を抑制しなくてはならないということになる。

つまり、保護者が「生徒が快適な環境で勉強ができるならもっと空調費を負担してもよい」と思っていたとしても、現在の仕組みではそのような支出は不可能なため、せっかく設置されているエアコンを十分に使うこともできず、生徒はこの暑い夏に耐えなければならないというわけである。県の予算措置によってよりひどくなっている気配がある、というのは、(C)の減少分(=普通教室の分の保護者等の負担減少)に釣り合って(A)が増加していればいいのだが、予算の増額が不十分なため、以前より節電して(B)を圧縮しないといけない状況になっているような感じなのだ。

例えば、私の娘は生徒数約1000人の高校に通っているが、年間の電気代はだいたい1000万円である。そのうち空調の費用は半分程度を占めていることが予想されるが、これと先ほどの予算措置の規模(=1校あたり147万円)を比べてみるといかに不十分であるかがわかるだろう。

ところで最近、志布志高校の校舎が建て替えになって、この空調問題が別の面から報道された(南日本新聞2026年9月7日付「新校舎 生徒負担3倍の危機 空調整備カンパ募る」)。

校舎の建て替えでも普通教室の空調機器は県費で整備できるようになったが、特別教室の分は県費の対象ではないので、整備するには同窓会・PTA等の予算で行わなくてはならず、その費用5100万円の寄付を募っているという。これまでは同窓会・PTAが徐々に空調機器を整備してきたので機器の購入・更新については大きな問題にならなかったものの、建て替えだと一気にお金がかかるので問題が表面化したのである(県立高校の建て替えは久しぶりな気がする)。

志布志高校の渡邉恵尋(よしちか)校長は特別教室へのエアコン整備に対し「空調は必須の教育インフラとなっている」と述べている。全くその通りである。「必須の教育インフラ」であるにもかかわらず県費で整備できない現状はおかしいとしかいいようがない。

ところで話が変わるが、最近、塩田知事の就任以来の4年間で「トップセールス」での海外出張の費用が1億7300万円に上り、知事のホテル代が基準オーバーしているケースが散見される、という報道があった。近年ホテル代は高騰しているから基準オーバーはやむを得ない面もあると思われ、これは塩田知事が気の毒な気もした。しかし気になるのは平均1153万円という一回あたりの出張費用である。今年4月のアメリカでの出張経費は約5370万円に上っている。燃料サーチャージ代が高くなっているとはいえ、1回で使うにしては結構な額だ。

先述の通り、1000万円あれば1000人規模の公立高校の1年間の電気代がまかなえる。アメリカ出張1回分の予算(5370万円)があれば、志布志高校の全特別教室にエアコンが設置できる。本当に県の懐事情が苦しくて電気代が払えないというのであれば仕方ないが、「トップセールス」しかり、県の新体育館しかり、「稼ぐ力」を名目とした施策には潤沢にお金が回っているように見えるから、「必須の教育インフラ」に回せるお金もあるだろうと思うのである。

それはともかく、県立高校の空調に関しては、せっかくあるエアコンが十分に使えない状態になっているのである。その原因は本質的には予算不足であったとしても、意図しない会計上の仕組みのせいともいえる。このことを公立高校の事務長さんに話したら「私たちも困ってるんですよ」と言っていた。(1)同窓会・PTAの予算を柔軟に活用できるようにするか、(2)県立高校の予算を増やすかして、長年にわたって同窓会・PTAが整備してきた空調設備をしっかりと使えるようにしていただきたい。高校生が教室の中で汗をダラダラ流しながら勉強しているというのは大問題なので、ご検討をお願いします。